うどん、貪欲に開発中 北区の老舗 オートミール入り、ガンダムイメージ…攻めてます!

2021年10月22日 07時07分

伝統の製法でつくった定番のうどん「満さくうどん」

 北区・飛鳥山ゆかりの偉人で、NHK大河ドラマの主人公・渋沢栄一が愛した「オートミール」。タンパク質や食物繊維が豊富で、筋トレが趣味の記者も数年前から食べている。だが正直、味にも食感にも飽きてきたころ、オートミールうどんと出合った。開発したのは北区の老舗乾麺メーカー。訪ねてみると。想像の斜め上をいくうどんがめじろ押しだった。
 灰色がかった麺はツヤがあり、食欲をそそる。ほのかな麦の香りが鼻を抜け、しっかりとしたコシは食べ応え十分。水でふやかしたオートミールのべちゃっとした食感はなく、ツルツルと何杯でもいけそうだ。

23区唯一の乾麺メーカー玉川食品の直売所・江戸玉川屋

 東京二十三区で唯一残る乾麺メーカーで、一九三五年創業の玉川食品が開発した「オートミール&プロテインうどん」。オートミールの粉末を30%も練り込み、タンパク質も加えた。渋沢栄一のイラストをあしらったパッケージもインパクト十分。三代目社長の関根康弘さん(46)は「体に良いだけじゃなく、おいしさも追求した。おいしくないと食べたくならないでしょ」と話す。

北区の江戸玉川屋で、麺作りについて語る玉川食品3代目社長の関根康弘さん

 宮中行事の新嘗(にいなめ)祭にも、うどんを献上する「宮内庁御用達」の玉川食品。同業者が次々と減る中、確かな品質と地域に根差した直売所のおかげで生き残った。そんな老舗中の老舗なのに、「プロテインうどん」に、アスリートのための「リカバリーうどん」、アニメ「ガンダム」のモビルスーツをイメージしたカラフルな麺など、驚きのアイデアを連発している。
 攻めの商品開発が始まったのは二〇一三年ごろ。「売り上げも落ち込み、経営は苦しかった」と関根さん。熱湯でこねる「湯捏(ゆごね)」や長時間乾燥させる「熟成乾燥」など代々続くこだわりの製法で作る麺の味には自信があったが、仕事のほとんどが相手先ブランドによる生産(OEM)で、会社の知名度は低かった。
 「知名度を上げないと売れない」。関根さんは他企業とのコラボを進め、東京の地酒と手ぬぐいのセット商品などを販売。お茶の袋の製造会社と開発した浮世絵風のデザインの包装は、販促ツールを競うコンテストで大賞を受賞した。
 知名度が向上する中、大手コンビニからプロテイン入りのうどん開発の打診があった。タンパク質が多くなると麺は硬くなり、なめらかさはなくなる。老舗のプライドをかけ、百グラム当たり十七グラムの高タンパクとおいしさの両立を実現。一八年十月に都内のコンビニで発売した。
 一九年には、サンリオとコラボした麺もスープもピンク色のハローキティのラーメン、ガンダムをイメージした赤や緑のパスタとラーメンを開発。産学連携で、疲労回復効果を高めたアスリート向けのうどんも作った。関根さんは「うちの麺がおいしいから、コラボが実現できた」と話す。

包装デザインに渋沢栄一やガンダムを取り入れたうどんやパスタ

 だが、そんな矢先にコロナ禍に見舞われた。販売先が取り扱ってくれなくなり、途方に暮れた。それでもあきらめなかった。一連のコラボで、開発のノウハウは手に入れた。こうして昨年夏、渋沢栄一ブームに乗り、わずか数カ月で完成させたのが「オートミール&プロテインパスタ」だ。
 今の主な販路は自社の直売所とネット、北区内の自動販売機。関根さんは「うちが生き残れたのは高い品質と直売所があったから。今も昔も開発と販売の創意工夫は欠かせない」。新たな販売手法としてキッチンカーの導入も検討中だ。二十三区で唯一残った乾麺メーカーは、工夫を重ね、令和の時代を生き抜いている。
文・西川正志/写真・市川和宏
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