<社説>衆院選 選択的夫婦別姓 実現望む声を託したい

2021年10月22日 07時47分
 衆院選公示の前日、日本記者クラブで行われた九党首の討論会。自民党の岸田文雄総裁(首相)だけが選択的夫婦別姓への賛成に挙手しなかった。一対八の異様な光景が政治の現状を物語る。
 民法は婚姻時に夫または妻の氏(姓)を称すると規定するが、夫婦の96%が夫の姓を選んでいる。
 改姓は、キャリアが途切れて職業的に不利になる、パスポートや銀行口座などの変更が煩雑など、数々の不便が語られてきた。年間五十万余件の婚姻数のうち、四組に一組は夫妻双方または一方の再婚。結婚、離婚、再婚のたびに姓を変えるのも多くは女性の側だ。
 名前はその人らしさを表す、人格にかかわる人権の問題だ。内閣府の調査では、選択的夫婦別姓への賛成は反対を上回り、特に若い世代では賛成が圧倒的に多い。
 夫婦が同姓か別姓かを選択できる制度は、別姓を名乗るという選択肢を増やすにすぎず、同じ姓を名乗りたい夫婦にまで別姓を強いるものではない。
 選択的夫婦別姓の法制化を求める運動は、男女雇用機会均等法成立や女性差別撤廃条約が批准された一九八〇年代に活発になった。
 九六年には法相の諮問機関である法制審議会が、選択的夫婦別姓を含む民法改正要綱案を答申し、法改正が期待されたが、「家族で氏が違うと絆が失われる」という自民党保守派などの反対で実現は阻まれてきた。
 しかし、名字の一致と家族円満は全く別問題だ。夫婦同姓を義務としている国は今では日本だけ。ジェンダー平等への関心も高まる中、導入を拒む合理的な理由はもはや見当たらないのではないか。
 夫婦同姓を強いる民法や戸籍法は違憲とする訴えに、最高裁は今年六月、一五年の判断に続いて規定を「合憲」とし、制度のあり方は国会で議論すべきだとした。
 法改正に動かない国会の怠慢が問われていたにもかかわらず、司法はその国会に再びボールを投げ返したのだ。その結果、政府は根本的解決には動かず、通称使用の範囲拡大にとどめている。
 社会のあり方を決めるのは、私たち有権者自身だ。今や多数となった選択的夫婦別姓の実現を望む声が政治に届くよう、政党や候補者を選び、託したい。

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