ウィシュマさんが残した手紙や絵が問い掛ける…名古屋入管収容中に文通重ねた支援者が書籍化

2021年10月22日 12時00分
 名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)の施設で収容中の3月に亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)。面会や文通を通じて支援を続けていた愛知県津島市のシンガー・ソングライター真野明美さん(67)が交流の記録をまとめ、今月中に出版する。タイトルは「ウィシュマさんを知っていますか?」。「託された手紙を通し、どんな社会だったらウィシュマさんが生きていけたのかを問い掛けたい」と話す。 (豊田直也)

ウィシュマ・サンダマリさん=遺族提供

 ウィシュマさんは2017年に留学の在留資格で来日したものの不法残留となり、昨年8月、名古屋入管の施設に収容された。今年1月から体調不良を訴え、支援者らが求めた点滴治療が行われないまま3月6日に死亡。当時の入管の対応が厳しく問われている。
 真野さんが、入管収容者の支援団体「START」(名古屋市)の紹介で、ウィシュマさんと初めて面会したのは昨年12月のこと。収容前に交際相手から暴力を受けていた境遇などを知った。仮放免された場合は自宅で受け入れようと決め、交流が始まった。
 ウィシュマさんから届いた手紙は、亡くなる約1カ月前の2月8日までに計13通。平仮名を使った日本語や英語で、スリランカで飼っていた犬のことや着物へのあこがれなどがつづられていた。絵を描くのが好きだと聞いた真野さんが画材を差し入れると、曼荼羅まんだらのような絵が届いた。
 真野さんが作った歌「生命いのち讃歌さんか」の歌詞カードを送ったことも。ウィシュマさんは「入管の中の問題を忘れられた」と喜んだ。
 だが、1月以降に送られてきた手紙では体調不良を訴える切実な内容が目立つように。1月18日には「12・5kgぐらいやせています。ほんとうにいま たべたいです」。2月2日には「食べることも飲むこともできない。職員は病院に連れて行ってくれない」と英語で助けを求めていた。
 出版する書籍には、こうした手紙の写真や日本語訳とともに、仮放免後の同居を楽しみにしていた真野さん自身の思いをつづる。今も手紙を読み返しては「なぜ彼女は治療もしてもらえなかったのか」と怒りが込み上げる。入管側にはウィシュマさんへの適切な対応を訴え続けたものの、助けられなかったことへの自責の念にも苦しむという。

出版する書籍の見本を、ウィシュマさんの妹ポールニマさん㊨に見せる真野明美さん=名古屋市内で

 9月25日には、名古屋を訪れたウィシュマさんの妹ポールニマさん(27)に出版間近となった書籍の見本を手渡した。ウィシュマさんが描いた着物の絵を見たポールニマさんは「姉はスリランカでもこの絵を描いて、日本で着物を着てみたいと話していた」と懐かしみ、続けた。「姉のように亡くなる人が2度と出ないように、多くの人にこの本を読んでほしい」
 書籍に関する問い合わせは、風媒社=電052(218)7808=へ。

 名古屋入管のスリランカ人女性死亡問題 名古屋入管の施設に収容中のウィシュマさんが今年1月中旬から嘔吐(おうと)などを訴え、3月6日に死亡した。出入国在留管理庁は8月、当時の対応を検証した調査報告書を公表。職員による不適切な対応や医療体制の不備を認め「危機意識に欠け、組織として事態を把握できていなかった」と指摘した。遺族らはウィシュマさんの生前の様子を収めた監視カメラ映像の全面開示を求めている。しかし、同庁は2時間分に編集した映像以外の開示を拒んでいる。

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