米国で日本未承認のワクチン、帰国後は抗体少なく 追加で交差接種は大丈夫? 本紙記者の場合は…

2021年10月23日 06時00分
 新型コロナウイルスのワクチン接種が普及し、有効性の指標の一つである中和抗体価を調べる人が増えている。米国で国内未承認のワクチンを打った本紙の岩田仲弘記者(54)もその1人。だが、想定外の数値の悪さに衝撃を受け、追加接種を検討した。ただ、未承認ワクチンの追加接種について、国内には十分な知見がない。前例がない中、思い悩んだ記者が下した決断は―。(沢田千秋)

新型コロナウイルスの中和抗体価を調べる検査=東京都港区で

 「当時は日本での接種のめどが立っておらず、一度で済むなら便利と思って」。岩田記者は帰国を翌月に控えた4月、1回の接種で完了する米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製ワクチンを接種した。帰国後、月日の経過とともに中和抗体価が下がると知り、9月に東京都港区の大星クリニックで、5500円で抗体検査を受けた。
 同院が使う米アボット社の検査では、中和抗体価が血液1ミリリットルあたり50ユニットを切ると、十分な抗体がない「陰性」と判定される。岩田記者はわずか82ユニット。同院の丸山邦隆医師は「2桁しかない場合、さすがに追加接種した方がいい」と助言した。
 アボット社の検査を使った研究が、欧州連合(EU)のワクチン先進国ハンガリーで行われた。平均年齢約53歳の医療従事者49人が対象で、ファイザー製ワクチン1回接種後、男性の平均は400ユニット。2回接種後のピークは、男性で平均1万2000以上だ。個人差はあるものの、岩田記者の場合、2回接種後のピークの約0・7%でしかない。
 追加接種をすべきか。地元の区役所に相談したところ、J&Jとファイザーやモデルナとの交互(交差)接種の前例はなく、安全性も未知数のため「自己判断で」と言われた。そこで、リスク覚悟でファイザーを接種。その後の検査で抗体価は約4900ユニットに上がり、ひとまず安堵した。
 J&Jの追加接種を巡って米国は今月、異なる種類を打つ交互接種を認めた。米国立衛生研究所の治験では、2回目に同じJ&Jを打つより、ファイザーやモデルナを打った方が抗体レベルは上がったとの結果が出ている。

◆「副反応増の懸念、慎重な判断を」

 国内では、1回目接種で重度の副反応が出た人や心筋炎を心配する若い男性を対象に、種類が異なるワクチンを打つ交互接種が認められている。しかし、現時点では承認済みのファイザー、モデルナ、アストラゼネカのみが対象だ。
 国立感染症研究所の脇田隆字所長は「J&Jを打った後に抗体価が低いのでファイザー、モデルナを接種したらどうなるか、議論した記憶はない」と話す。関係者は「J&Jや中国、ロシア製など、国内未承認のワクチンはそもそも打ったことにならず、ノーカウント扱いだろう」と明かす。
 中和抗体価の研究を続ける国立病院機構宇都宮病院の杉山公美弥副院長は「交互接種の重篤な副反応はまれだが、体内に入る成分が増えるため、増えた分だけ副反応の増加が懸念される」と警告。一方で「抗体を作ることに優れるファイザー、モデルナと、細胞に記憶させることにたけたアストラゼネカの交互接種は、同種接種より高い効果があるとの報告もある」と説明。リスクの議論が進むまでは、慎重に判断すべきだとしている。

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