<この声を 衆院選>性の多様性 当たり前の権利認めて

2021年10月23日 07時43分

さいたま市のパートナーシップ宣誓制度第1号となったカップルの稲垣さん(左)と立崎さん=同市で

 真っ白なタキシードで結婚式を挙げた二人の幸せそうな写真が、リビングの壁に何枚も飾られている。その中に、白い額に入った一枚の紙。「パートナーシップの宣誓をされたことを証します」。さいたま市が発行したものだ。
 市内に住む稲垣晃平さん(30)と立崎聖也さん(32)は二〇二〇年四月、LGBTなど性的少数者のカップルが婚姻に相当する関係にあると公的に認める、同市のパートナーシップ宣誓制度の第一号となった。稲垣さんは「生まれ育った市に認められ、素直にうれしかったし、多少の安堵(あんど)感があった」と振り返る。
 会社員の二人は一五年七月に同居を始め、翌年家族に見守られて結婚式を挙げた。ただ、戸籍上の性別は男性同士のため法律上の婚姻はできず、市に制度ができるとすぐに申し込んだ。
 パートナーシップ制度では、婚姻のように所得税の配偶者控除の適用を受けたり、子の共同親権を持ったりはできない。ただ自治体によっては家族として公営住宅への入居が認められたり、携帯電話料金の家族割サービスを受けられたりする。県内ではさいたま市を皮切りに、今月十一日に導入した狭山市まで十八市町に広がった。
 一八年から自治体や議会に制度の導入を働き掛けてきたレインボーさいたまの会には、宣誓したカップルから「自分たちの街に制度があることを誇りに思う。住み続けたい」と歓迎する声が届く。加藤岳代表(43)は「制度があると、性的少数者への取り組みの必要性を理解する自治体として安心して住める」と話す。
 地方で制度導入が広がる一方、性の多様性を巡る国の動きは鈍い。今年五月、LGBTなどへの理解を促す法案に与野党が合意したが、自民党の一部議員の反発で国会に提出されなかった。衆院選に先立ち今月開かれた日本記者クラブ主催の党首討論会でも、同法案を来年の通常国会に提出することに岸田文雄首相は唯一、賛成しなかった。
 稲垣さんは、パートナーシップ制度には限界があり、法的に婚姻を認めてほしいと願う。コロナ禍でその思いは強まった。カップルのどちらかが感染して入院した時に「家族ではない」と面会を認められない不安がある。治療や手術への同意は、互いに署名する権利があると公正証書を作成して備えているが、費用は十万円超かかった。証書があっても医療機関がすぐには応じない懸念もある。
 また、二人の親や親戚は関係を理解しているが、そうではない場合、パートナーが亡くなっても葬儀で喪主を務められず、参列さえできない可能性がある。相続も法的には他人扱いだ。
 婚姻関係なら当たり前の権利が認められない不条理。稲垣さんは「特別な制度を求めているわけではない。(異性婚カップルと)同じスタートラインに立てないのは、おかしくないですか」と問いかける。
 性の多様性に関わる人権などセクシュアリティ教育を研究する埼玉大の渡辺大輔准教授(47)は「困難に直面している人がこの瞬間にもいる。性別にかかわらず好きな相手と結婚できる制度や、性的少数者への差別を戒め人権を保障する法律を、早急に整える必要がある」と指摘する。
 少数者の権利を守ることは、あらゆる人の生きやすさにつながる。渡辺さんは「当事者だけでなく、性的少数者をめぐる社会的課題を理解する人たちも政治に声を届けることが重要だ」と話す。
 声を届ける大切な機会が、三十一日に訪れる。(寺本康弘)
衆院選2021
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