映画「007」に下町の畳が登場 過去にパリコレに提供 老舗畳店の海外戦略実る

2021年10月23日 18時39分
 英国の人気スパイ映画のシリーズ25作目で、現在公開中の「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」に、東京・下町で作られた畳が重要な舞台装置として登場する。ライフスタイルの変化で需要が減る伝統産業の生き残りをかけ、積極的な輸出を続けてきた老舗店の技術が関係者の目に留まった。(砂上麻子)

ジェームズ・ボンドを追い詰める悪役サフィンのアジト。森田畳店の畳が敷き詰められている(©2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.提供)

◆「ジェームズ・ボンドだ」

 「007?最初はいったい何の番号だろうと」。荒川区西日暮里の「森田畳店」の森田隆志さん(57)が振り返る。2019年6月末、畳を注文する英文のメールが届いた。よく読むと、差出人は映画の美術担当者。畳は撮影スタジオに送ってほしい、とある。「ジェームズ・ボンドだ」。映画のオファーは初めてだったので驚いた。
 1933年創業。2代目で父の精一さん(88)が営む店では2000年に輸出を始めた。フローリングの住宅が増え、畳離れにストップがかからない現状への危機感があった。日本語のほか、英語とフランス語のホームページをつくり、海外の顧客には購入前に無料でサンプルを送るようにした。

◆パリコレの写真掲載直後に依頼

 日本趣味に憧れる富裕層に人気がある。米国や英国、オーストラリア、シンガポール、香港など現在までの輸出先は50以上の国と地域に上る。
 18年のパリコレクション(パリコレ)では、ファストファッションブランド「H&M」のショーに300枚の畳を提供した。「007」のメールが来たのは、店のホームページにパリコレの写真を掲載した直後だった。森田さんは「見てくれていたのかな」。

公開中の映画「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」で使用されている畳を手掛けた森田隆志さん(左)と藤田貞男さん。左は同じ型の畳=東京都荒川区の森田畳店で

 森田さん親子と、職人の藤田定男さん(77)の3人で1週間で112枚の畳をつくり、英国に送った。日本産イグサを使用。畳のへりは黒色にして高級感のある仕上がりにした。

◆「畳の良さに気づくきっかけになれば」

 映画では、ラミ・マレックさん演じる悪役・サフィンのアジトに畳が敷き詰められた。この場所で、ダニエル・クレイグさん演じる6代目ジェームズ・ボンドとサフィンの対決シーンがある。今月1日の日本公開後、映画を見たファンからは「同じ畳がほしい」と注文が相次いでいる。
 「こんなに反響があったのは007が初めて。日本人が畳の良さに気づいてくれるきっかけになればうれしい」と語る森田さんは、まだ映画を見ていない。
 「必ず見に行きます。畳がどんなふうに使われているのか楽しみ」と期待している。

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