バイデン米政権の温暖化対策に暗雲 2030年の温室効果ガス半減目標、与党内の反対で法案縮小

2021年10月23日 18時58分
 国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が今月末から開かれるのを前に、米バイデン政権の温暖化対策に暗雲が広がっている。自ら掲げた2030年の温室効果ガス半減目標達成に不可欠とされる大型歳出法案が、与党内からの反対で縮小を余儀なくされているからだ。世界の気候変動対策は待ったなしだが、けん引役が不在になりかねない。(ワシントン・金杉貴雄)

米ワシントンの議事堂前で20日、バイデン大統領(右)の大型歳出法案に反対する民主党上院議員らにふんしてやゆする環境活動家=AP

◆法案成立ならば半減目標に近づくが…

 法案は幼児教育無償化から医療支援までバイデン氏が掲げた公約を実行する内容で、10年で3兆5000億ドル(約400兆円)を費やす。最重要政策の1つと位置付ける気候変動対策も盛り込まれ、民主党幹部は法案が成立すれば30年までに米国で45%分の温室効果ガスを抑制できると試算、政権が掲げた半減目標に近づく。
 法案の気候変動対策で最大の柱が、1500億ドル(約17兆円)の「クリーン電力プログラム」だ。再生可能エネルギーなど二酸化炭素を出さない電力を年4%以上増やした電力会社などを増加量に応じ助成する一方、目標に満たなければ罰金を科すもので、「アメとムチ」でクリーン電力を増やす仕組みだ。

◆クリーン電力プログラムは断念か?

 しかし与党の民主党上院議員2人が、3兆5000億ドルの法案は「巨額すぎる」として5割以下への縮小を主張する中、クリーン電力プログラムも削除を要求。法案成立には同党がぎりぎり半数の50議席を確保する上院で全員の賛成が必要なため、プログラムを断念せざるを得ないとみられている。
 バイデン氏は、地球温暖化を否定し国際枠組み「パリ協定」を離脱したトランプ前大統領の方針を転換。逆に気候変動対策で世界をリードすると標ぼうし4月には気候変動サミットを主催。日本を含め他国に温室効果ガス削減目標の引き上げを迫りつつ、米国自らは2030年までに05年比で50~52%削減するとの「野心的」目標を発表した。
 その具体策となる大型歳出法を引っ提げ、COP26が開かれる英国のグラスゴーに乗り込む青写真を描いていただけに、プログラムの削除は大きな打撃だ。

◆米国が掲げた排出削減に「疑い生じる」

 バイデン政権は、法案を縮小しても他の税制優遇や法案以外の行政措置などで「30年目標の達成は可能」と主張する。だが、環境政策に詳しいカリフォルニア大のデビッド・ビクター教授は「クリーン電力プログラムなしで気候変動対策はできると言うかもしれないが、それは不可能だ」と疑問視する。
 法案が未成立だったり大幅縮小を余儀なくされたりしてバイデン氏がCOP26に出席した場合、「米国が自ら掲げた排出削減を行うことに疑いが生じる」とも指摘。世界2位の二酸化炭素(CO2)排出国で「化石燃料大国」でもある米国が、中国やインド、ロシアなど他の大量排出国に対し「対策を求め圧力をかける能力を傷つけるだろう」と影響を懸念している。

関連キーワード


おすすめ情報