<この声を 衆院選>地方の衰退 「切り捨て」あり得ぬ

2021年10月24日 08時05分

シャッターが下りたままの店舗が目立つ深谷市の商店街。歩いている人はほとんど見かけない=深谷市で

 二〇二四年から新一万円札の肖像になる深谷市出身の実業家・渋沢栄一。NHK大河ドラマの主人公にもなり、JR深谷駅前には「生誕の地」をアピールするのぼり旗がたなびく。市を挙げて観光客の増加など街の活性化を期待するが、駅前から少し足を延ばすとシャッターを閉めた店舗が目立つ。
 「子どものころは本屋やおもちゃ屋、雑貨屋などがたくさん並んでいた」。市中心部の五つの商店街をまとめる深谷商店街連合会の小暮逸生会長(61)は、かつてのにぎわいを懐かしむ。最盛期の昭和四十年代には七百五十店舗を数えたが、現在は二百五十店舗ほど。店主の高齢化と後継者不足が主な要因で、「最近の十数年は店の減り方が加速しているように感じる」と寂しがる。
 政府は一四年、東京一極集中の是正と人口減少の克服を目指して「地方創生」を打ち出した。しかし、地方移住や企業の地方移転などを後押しするとした一九年度までの五カ年計画は、空回りした感が否めない。二〇年までに東京圏と地方の転出入を均衡させる目標の達成は、二四年度に先送りされた。
 九年近い自民党政権の間、県の人口は南部を中心に約十三万人増えたが、肝心の北部や秩父地域では減少が続く。深谷市の人口は約十四万人(今年九月時点)で、〇六年一月の岡部、花園、川本の旧三町との合併直後から約六千人減った。反比例するように空き家は増え、直近一八年の空き家率13・7%は県平均の10・2%を上回る。
 小暮さんは、地域の活性化や魅力あるコミュニティー作りには、住民の工夫や努力が必要だと考える。そして、そのためにも「個人店などで若い人たちが安心して働けるように、大企業並みの年金や経済的保障を受けられるような制度への支援を」と望む。
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 「花と歌舞伎と名水のまち」をうたい、年間約四十五万人の観光客が訪れる小鹿野町も、人口減少と少子高齢化が深刻だ。六十五歳以上が占める割合は38・5%(今年一月現在)。町内に鉄道の駅はなく、かつて四校あった中学校は五年前に一校に統合された。国は一七年に町全域を過疎地域に指定した。
 「地方が見捨てられる、あるいは切り捨てられるということは、あってはならない」。森真太郎町長(65)は強く訴える。人口減少を少しでも抑え、定住人口や交流人口の増加を図ろうと、さまざまな知恵を絞ってきた。
 生き残りをかけて、町が取り組むのが「地域商社」の設立だ。民間の力を導入し、道の駅や農産直営所などの採算の取れた管理運営や、観光を通じた町のブランド力アップを目指し、地域経済活性化のけん引役を担ってもらう。社長候補を募ったところ、国内外から予想を大きく上回る四百八人の応募があった。
 「うれしい悲鳴。地方再生の成功例として全国に発信されれば」と、町の担当者は取り組みの確かな手応えを口にする。地方の新たな可能性を示すことで、同時に地方の課題に目が向けられるきっかけになるかもしれない。人口一万人余りの小さな町が上げる挑戦の声に、誰が、どう耳を傾けるのか、問われている。(渡部穣、久間木聡)
 =おわり

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