地域と生きる モスク in 豊島区

2021年10月25日 07時13分

<困窮者へ炊き出し>大鍋で炊き出し料理を作るモスクの関係者や地元の支援者ら

 豊島区・JR大塚駅から徒歩5分の場所に、イスラム教の礼拝所「マスジド(モスク)大塚」がちょこんと立っている。実はこのモスク、家庭に眠る食品を子ども食堂などに届ける「フードドライブ」や、生活困窮者への炊き出しといった慈善活動を次々と実践。アフガニスタンへの支援も20年以上続けている。国や宗教を超えた共助の輪を見つめた。
 十月九日、緑色のドームが目印のマスジド大塚にはイスラム教徒(ムスリム)らが次々と訪れ、コメや缶詰などを寄贈していた。食品の提供を受ける子ども食堂の運営者、星野拓也さん(51)も個人的に力になろうとインスタント食品などを持参。「食堂利用者はみな、感謝しています。イスラム教は縁やゆかりがない人も支えようとするが、それはすごいこと。そうした社会の在り方は、日本にとっても必要なことだと思う」と話した。

<子ども食堂に寄贈>豊島区のモスク「マスジド大塚」で送られてきた食品などを整理する慶応大生=いずれも豊島区で

 フードドライブは一月から不定期に、マスジド大塚を運営する「日本イスラーム文化センター」と慶応大の研究会「ムスリム共生プロジェクト」が開いてきた。同プロジェクトの長谷川護さん(21)は「たくさんの食品が集まり、マスジド大塚が地域やムスリムから信頼を集めていると感じる」、新居佳南穂(にいかなほ)さん(21)は「モスクを知らない人も、イスラム教が地域のつながりを大切にすることを知ってほしい」と期待した。
 マスジド大塚は一九九九年、前身の施設から現在の場所に移転。日本人、パキスタン人、バングラデシュ人など多様な人々が日々、礼拝に訪れる。
 これまで、さまざまな慈善活動に取り組んできた。アフガニスタンで大干ばつが起きた二〇〇〇年以降は、衣料品などをコンテナ百台分集め、アフガン難民らに送り、小学校など二十五校を現地に開設。イスラム主義組織タリバンが実権を握り、情勢が混乱する現在も、衣類や車いすなどを送り続けている。一一年に東日本大震災が起きると、被災地を百回以上訪問。地元商店街などとも協力し、おにぎりやカップ麺を持って行った。一二年ごろからは、支援団体による池袋での炊き出しに、弁当などを提供。コロナ禍で利用者は以前の倍以上の四百人に上り、利用者が食べ物を求めてモスクに来たこともあった。困窮した留学生などからの相談も多く寄せられている。

<アフガン支援>アフガン難民らに送られた衣料品など=日本イスラーム文化センター提供

 こうした活動を続けるのは、「困っている人を助けなさい、というイスラム教の教えがあるから」と日本イスラーム文化センターのクレイシ・ハールーン事務局長(55)。イスラム教への偏見や差別は少なくなく、「武器を隠していないか心配だから」と、部屋を貸してもらえないこともあったという。それでも、「偏見の無い国はないでしょう。文句は言いたくありません。できることをするだけ」と淡々と語る。
 「すごい」と言われることもあるが、「そうは思わない。もっとやらなければ、と反省の気持ちでいっぱいです。ムスリムか、国籍がどこかにかかわらず、みな大家族。私たちは当たり前のように、みんなのことを考えないといけません」。

「困っている人助ける イスラム教の教え!」日本イスラーム文化センターのクレイシ・ハールーン事務局長

 国内のムスリムコミュニティーを研究する慶応大の野中葉准教授は、「マスジド大塚は全国的に見ても地域に開かれたモスクの代表格。周囲に働き掛け、困っている人を助ける精神を広げている。イスラム教に怖いイメージを持つ人もいるが、活動が一般の人の目に触れることで理解が広がることが期待される」と話す。
 文・中村真暁/写真・坂本亜由理
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