吉川トリコさん初のエッセー集 「不妊・流産・・・ タブーなくす」 女性の思い 語りやすく

2021年10月25日 07時14分
 作家の吉川トリコさん(44)が、初のエッセー集『おんなのじかん』(新潮社、一六五〇円)=写真=を出した。不妊治療や流産など自身の体験を軸に、日々の生活の中から、世間で当たり前とされ、押しつけられがちな女性像や家族像に異を唱える。帯文にはこんな言葉が。<女性の身体にまつわるタブーよ、くたばれ!!!> (中村陽子)
 作家になって十五年以上、映画化された『グッモーエビアン!』など、人気作を数多く世に送り出してきたが、エッセーが本にまとまるのは初めて。「誰かに語りかけるような気持ちで書いたら、つい長くなっちゃった」と話す。
 二〇一九年から一年半、新潮社のウェブメディアで連載したエッセーに、書き下ろしを加えた三十編を収録。最もページを割いたのが、結婚や出産にまつわる話題だ。このうちの一編「流産あるあるすごく言いたい」は今夏、ネット上の記事やコラムなどを対象にした「PEPジャーナリズム大賞」のオピニオン部門に選ばれた。

新刊について話す作家の吉川トリコさん

 吉川さんは、二十歳から一緒に暮らしてきた男性と三十代後半で結婚。不妊治療にも取り組んだが、出産には至っていない。それらの体験について、人前で話しづらい空気が社会に満ち、流産も単に「悲劇」とだけくくられているようで、違和感があったという。「悲しいことではあるんだけどね。自分で感じた実際のことをもう少しちゃんと書いておかないとって」
 悲しさや寂しさとともにある喜びや幸せが、ありきたりの表現を避け、正確につづられている。「私も、もやもやしたまま書いているところがあって、書きながら輪郭をつかんでいく感じでしたね」。流行語も交えたノリの良い文章は読者の共感も誘うはずだ。
 これまで小説で「普通」からはみ出した女性の生き方を肯定する物語を繰り返し描いてきた。今作も「女性を応援したいという気持ちがあった」という。
 タブー視されている体験を明かすことで、自分も同じだと安心する人がいるかもしれない。全く違う境遇にいる女性や男性たちも、思いやりが持ちやすくなるかもしれない。<知らないより知っているほうがやさしさに近づけるのであれば、私は知りたいと思うし、知ってほしいとも思う>と作中で明かす。
 実際、エッセーを発表した直後から「実は、私も」という反響が思いがけないほど多く届いたという。自分が養子として育ったなど、秘密を打ち明けてくれた男性も複数いた。
 好きなアイドルや、見た映画についても、たくさん盛り込んだ。親しい友との尽きないおしゃべりをしている気分になる一冊。「ここに書いた中から、小説になる部分も出てくるかも」

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