「思い出の地なくなるのは困る」ジブリ美術館の館長が驚いたファンの危機感、語った開館20年の思い

2021年10月26日 07時06分

記念撮影に並ぶ人が絶えない屋上のロボット兵=いずれも三鷹市で

 三鷹市の「三鷹の森ジブリ美術館」(市立アニメーション美術館)が今月、開館から20年を迎えた。ジブリアニメの世界観を体感できる施設として国内外から訪れた人は累計約1229万人を数える。コロナ禍の直撃で2020年度の来館者数は7分の1に減り、大幅な赤字に転落した。安西香月館長(56)に同館のこれまでとこれからを聞いた。

「トトロのニセ受付」と安西香月館長

 −開館から二十年、来館者の反応は。最近は三世代で訪れる人も目立つ。
 「当館として周年は特別視していませんが、ファンや近隣の方々にとって二十年は一つの節目。小さいころ、親と一緒に来たという方が再び来館され、『目の高さが違うから当時の印象とまるで違う』と驚いていたり、子どもが巣立ち、心にすき間が空いちゃったというお母さんが『二十年間が戻ってきた』と喜んでくれたり…」

今月3日の三鷹市民デーに1日限りで登場したトトロのバルーン

「アーヤと魔女」の制作過程が楽しめる企画展

 −名誉館主の宮崎駿監督は。
 「監督は『二十年もよくもったね〜』と言っていました。でも『子どものための美術館にしたい』という思いは二十年前から一貫しています。『こういうものに出合っていたら楽しかっただろうな』『自分の中の四歳がこれを見てワァと思うな』。子どもの視点にこだわり、展示のアイデアを考える監督を見てると『幸せな人だなあ』と思います」
 −普段から人数を絞っている分、コロナ禍の影響はより深刻に出た。三鷹市が来年一月末まで、ふるさと納税サイトで支援を募っており、これまでに約四千人が三千百万円余を寄せた。ただ、数億円規模の減収を埋めるには至っていない。
 「支援はとてもありがたい。(寄付の)金額は多いに越したことはない。開館から二十年が経過し、修理しようにも同じ部材がないなど維持管理費がかさんでいる。寄付してくれた方の中には、当館で奥さんにプロポーズをしたという人もいて『思い出の大切な地がなくなってしまうのは困る』と危機感の強い方が多いのには驚きました。『子どもに驚き、感動してもらいたい。きれいなものを見てもらいたい』との思いは強い。『続けたい』という意志がある限り、美術館は続けます。入館者数の制限はコロナの様子を見ながら少しずつ緩和し、増やしていきたい」

寄付した人へ三鷹市が送った、宮崎監督のイラスト入りのはがき

    ◇  ◇
 井の頭公園の緑に溶け込むようにたたずむ同館。屋上には守り神という設定の「天空の城ラピュタ」のロボット兵が立つ。ジブリが初めて挑んだフル3DCGアニメの制作過程を紹介する企画展「アーヤと魔女展」は来年五月まで開催中。
 入館は日時指定の予約制。大人・大学生千円、小学生四百円など。チケットの問い合わせは案内ダイヤル=電(0570)055777=へ。同館支援のふるさと納税については三鷹市企画部=電0422(45)1151、内線2101=へ。
<あんざい・かづき> 1965年、石川県生まれ。金沢美術工芸大卒。98年、スタジオジブリに入社し、ジブリ美術館の開館準備に携わる。愛知県愛・地球博記念公園「サツキとメイの家」などジブリ関連施設の展示デザインを多く手がける。17年、館長に就任。
 ©Museo d’Arte Ghibli ©Studio Ghibli
 文・花井勝規/写真・木口慎子、花井勝規
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