<社説>衆院選 敵基地攻撃能力 現実的な選択肢なのか

2021年10月27日 07時36分
 相手国のミサイル発射基地などを自衛隊が直接攻撃する「敵基地攻撃能力」の保有を認めるか否かが、衆院選の争点となっている。
 岸田文雄首相が自民党総裁選中から保有に意欲を示し、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて十九日に開かれた国家安全保障会議(NSC)で、保有も含むあらゆる選択肢の検討を確認したためだ。自民党公約にも明記されている。
 歴代内閣は、ミサイル発射基地攻撃は「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」と憲法九条が認める自衛の範囲内としつつ、他国を攻撃する兵器を平素から備えることは憲法の趣旨ではないともしてきた。
 安倍政権以降、長射程ミサイルの整備やヘリ搭載型護衛艦の空母化を進めてきたが、敵基地攻撃への利用は否定してきた。一転、攻撃能力の保有を認めれば、安全保障政策の抜本的な転換になる。政権としては、攻撃能力保有が相手に攻撃を思いとどまらせ、抑止力を強化するとの判断だろう。
 しかし、敵基地攻撃能力の保有は憲法九条の専守防衛を逸脱し、ミサイル発射基地を探るため、情報収集衛星やレーダー網の整備など、巨額の防衛費が必要となる。
 実際に抑止力を向上させるのかも不明で、周辺国の軍拡競争を促し、逆に緊張を高める「安全保障のジレンマ」に陥る恐れもある。現実的な選択肢とは言い難い。
 公明党の山口那津男代表が敵基地攻撃能力の保有に「一九五六年に提起された古めかしい議論の立て方だ」と否定的なのも当然だ。
 立憲民主党は公約で「専守防衛に徹しつつ、領土・領海・領空を守る」とし、敵基地攻撃能力の保有については枝野幸男代表が「自衛隊が自前で獲得する能力としては現実的でないというのが専門家の圧倒的指摘だ」と述べている。
 共産党は保有は違憲として阻止を目指す立場。日本維新の会は公約で「領域内阻止能力の構築への検討」を掲げている。
 自民党は、岸田政権が継続すれば国家安全保障戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を年末に改定し、敵基地攻撃能力の保有や装備調達方針の明記を検討する方針だ。その場合「平和の党」を掲げてきた公明党は、連立を離脱するのか否かも問うてみたい。

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