ネット格差の解消へNPO「ニューヨーク・メッシュ」が活動 低所得家庭に無料でサービス提供

2021年10月27日 12時00分
 水道や電気と同様、現代人の生活に不可欠となって久しいインターネット。米ニューヨーク市では、貧富の差によって接続に格差がある現状や民間大手による寡占に風穴をあけようと、無料サービスを提供するNPO活動が広がっている。分散型ネットワークを使うため、災害や通信混雑にも強いという。市内の接続工事に足を運んでみた。(ニューヨーク・杉藤貴浩、写真も)

マンションの屋上でネット接続工事をするニューヨーク・メッシュのボランティア、フンダ・ゲディックさん㊥と依頼者のベン・リーボビッツさん㊧

 市中心部の6階建てマンションの屋上。秋晴れの下、住民からの依頼で無償のネット接続を提供する「ニューヨーク・メッシュ」のボランティア、フンダ・ゲディックさん(41)は手際良く周囲の電波状況を調べ、元から屋上にあったポールを利用してネット機器を取り付けていった。「あとは依頼者の部屋でネット接続ができるのを確認すれば終わりかな」
 メッシュの活動が始まったのは2014年。通信容量のかさむ動画配信や会員制交流サイト(SNS)が拡大していたが、月90ドル(約1万円)近くに及ぶ民間事業者の高速通信サービスは低所得家庭にとって軽くない負担だった。活動は創設者のコンピュータープログラマーらが「生活の中心となったネット接続に貧富による格差があってはならない」と訴え、ボランティアの技術者がネットワークを広げてきた。運営は主に地域社会からの寄付で賄われる。加入者は任意で機器設置費用を支払い、月ごとの資金支援を求められるが義務ではない。

フンダ・ゲディックさんが接続工事をしたマンション。米国では所得の違いによるネット利用格差が問題となっている

 ニューヨーク市内では、事実上3つの民間事業者が市場を分け合っており、価格引き下げとサービス向上が進まないとの不満も強い。この日、ゲディックさんに接続工事を依頼したマンション住民ベン・リーボビッツさん(45)は「大手のネット接続は高いわりにしばしば途切れた」と話す。
 民間事業者のサービスは、各世帯がそれぞれ少数のインターネットへのアクセス拠点に接続する方式。メッシュの場合はそれに加えて世帯同士もつながって地域でネットワークを形成する仕組みのため、通信経路が分散され、アクセス集中や障害からの復旧にも強いという。
 半面、メッシュのサービスは既存のネットワークに隣接する地域にしか広げられない。リーボビッツさんは「価格の理由だけではなく、自分がネットワークの一員になることでサービス地域を広げて貢献できるから乗り換えた」と話す。
 市によると、貧困世帯の46%が今も高速ネット通信に接続できていない。ゲディックさんは「新型コロナウイルス禍による遠隔勤務や授業など、ネット格差はますます大きな問題になっている」と指摘。他の30人ほどのボランティアとともに、3000世帯程度まで広がったメッシュのネットワークをさらに広げていきたいと考えている。

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