入浴介助 現場に戸惑い 介護報酬 自立支援に重点加算 デイサービス経営悪影響も

2021年10月27日 11時11分
 4月の介護報酬改定で、デイサービスの入浴介助に対する加算が見直され、小規模な事業者に不安が広がっている。利用者が自宅で入浴できるよう支援するサービスへの加算が新設された一方、従来の施設での入浴介助に対する加算が減額され、経営が悪化する可能性もあるためだ。「自宅のお風呂は介護負担が大きい」と心配する利用者の家族もいる。 (五十住和樹)

■安全面 心配

 「デイサービスの良さは入浴介助。見守りによる安心感がある。これがなければ自宅で介護は続けられなかった」。要介護2で認知症の義母(90)の世話をした六十代の女性=東京都練馬区=は振り返る。三年前に義母宅に転居。義母は今年六月に骨折して入院するまで、訪問介護を受けながら地元の地域密着型通所介護「デイサービスエプロン」に週六回通い、入浴介助などを受けた。女性は「義母は入浴をとても楽しみにしていた」と話す。
 今回の改定で、厚生労働省は手厚い入浴介助加算を新設した。事業者がこの加算を得るには、まず医師や理学療法士らが利用者宅を訪問し、浴室の環境や利用者の動きをチェック。自宅で入浴できるよう、入浴用いすなど福祉用具の購入や住宅改修サービスを助言する。さらに個別の入浴計画を作り、施設で入浴する場合は利用者宅の風呂に近い環境にして、利用者ができるだけ自力で入れるように介助することが条件だ。
 エプロンの管理者、松野亜矢子さん(52)は「入浴介助を受けている利用者に自宅での入浴を希望する人はほとんどいない。狭くて段差のある浴室では家族の介助が難しく、特に一人暮らしだと安全な入浴は困難」と指摘。「入浴介助の基本報酬が低い上に従来の加算を減らされるのは、経営的に真綿で首を絞められる感じ」と心配する。

■賛成の声も

 自宅入浴を目指すため入浴介助を活用することに賛成の意見も。大分市に三つの事業所を持つ「デイサービス楽(らく)」は二〇〇七年の開設以来、機能訓練重視のケアを続けてきた。作業療法士でもある社長の佐藤孝臣さん(52)は「有する能力に応じ自立した日常生活を営むという、介護保険法の目的に合った加算」と話す。
 佐藤さんによると、「自分の力で入浴したい」という本人の意思がサービス利用の前提だ。まず自宅の風呂の形状や心身の状況を理学療法士や作業療法士が詳しく聞き、浴槽をまたぐなど入浴動作を想定した筋力をつけるメニューを作る。具体的には午前中に一時間〜一時間半、台の昇降運動などのリハビリを行う。管理栄養士が利用者ごとの状況を把握し、タンパク質などの栄養補助食品も付けた昼食を提供。午後は歯科衛生士による口腔(こうくう)ケア指導や、上肢の機能訓練を行う。
 福祉用具事業者と相談して入浴台やシャワーチェアなどもそろえ、安全な入浴環境を整える。「半身まひでも、半年以内に自力で入浴できるようになる人も多い」と佐藤さん。入れ歯の不具合を直して栄養状態が良くなったり、多剤服用によるふらつきなどの副作用を改善して入浴できるようになったりした例も。医師や言語聴覚士を含めた多職種の連携もしている。
 今回の加算見直しについて、佐藤さんは「小規模事業所は経営が苦しくなる」とみる。「デイサービスは介護家族の休息(レスパイト)のためでもある。心身機能が落ちた人の入浴には人手がかかる。ここをカバーできる介護報酬が必要だ」と訴える。

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