開発のきっかけは、社長に届いた1通のメール 保育・介護の現場で大活躍の「透明マスク」<まちビズ最前線>

2021年10月31日 05時50分
 ユニ・チャーム(港区)の透明マスクが好評だ。鼻と口を透明フィルムで立体的に覆うことで口元など顔の8割が見える。主に保育や教育、介護の現場での需要が高く、公式販売サイトでは月に1度の販売後、数日で売り切れる。政府も会見などでこのマスクを使い、話題を呼んだ。開発のきっかけは昨年7月、聴覚障害のある社員が高原豪久社長に送ったメールだった。(坂田奈央)

町田市の保育園で、「顔がみえマスク」を着けて子どもと触れ合う保育士ら=ユニ・チャーム提供

◆子どもたちの目線が口元に

 「発語がうまくできない月齢の子どもにとって目だけでの会話には限界があり、口元が見えるマスクは必要」。透明マスクを試したつながり保育園・まちだ(町田市)の大西正子施設長はこう主張する。
 青森市の認定こども園「青森ひかり」で0~1歳児を担当する藤本理恵教諭も「透明マスクを着けてから、子どもたちの目線が目だけでなく口元にも向くのを感じます」と話す。
 このマスクは、ユニ・チャームが今年4月に発売した「顔がみえマスク」(1480円)だ。

◆原点は、聴覚障害のある社員の「お手製マスク」

 「相手の口元が見えないので、何を話しているのか分からず困っています」。同社グローバル人事総務本部の杉本あゆみさんは昨年7月、高原社長が全社員に送る誕生日祝福メールへの返信で、こう伝えた。
 杉本さんは生まれつき聴覚障害があり、相手の口元を見てコミュニケーションをとってきた。コロナ後は市販マスクの真ん中をくりぬき透明素材を縫い付けた母親の手製マスクを同僚らに配っており、その写真もメールに添えた。すると、高原社長の指示で即、透明マスクの開発が始まった。

㊧不織布マスクを着けた場合 ㊨「顔がみえマスク」を着けた場合=ユニ・チャーム提供

◆わずか8カ月で開発

 当時はマスク不足が続き、不織布マスクの増産などで現場は多忙を極めていた。だが、グローバル開発本部の釼持泰彦担当部長は「困っている人が自分らしい生活を送れるようにすることが、自分たちの存在価値だと考えた」と振り返る。その後、8カ月間という短期間で「顔がみえマスク」を作り上げた。

◆気象庁の緊急会見でも担当者が着用

 政府も現場での使用や効果検証を実施している。気象庁は10月から、地震などの災害時の緊急記者会見では原則、このマスクを使う。同庁広報室は「聴覚に障害がある人にも警戒事項や危機感を正確に伝えたいと考えた」と説明する。今月20日、熊本県の阿蘇山が噴火した際の緊急会見でも使われ、話題になった。
 文部科学省は今年7月の2日間、関東の幼稚園15園と聴覚特別支援学校4校でこのマスクを試験的に導入。指導上の効果に関し、検証結果を近く公表するという。

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