コロナ禍でも「1億円プレーヤー」増加 従業員と役員の年収格差が拡大、背景に株価

2021年10月28日 06時00分

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で業績が低迷する企業が多い中でも、年1億円以上の報酬を得る上場企業の役員数は高止まりが続いている。東京商工リサーチの直近の集計では、2021年3月期に1億円以上を得た国内企業の役員数は前期を上回り、11人増の544人に。これは過去2番目の多さで、一般の働き手の給与減とは対照的だ。衆院選でも、収入格差の是正策は大きな焦点になっている。(池尾伸一)

◆株高が要因

 株式などを含む報酬総額のトップはソフトバンクグループのシガース取締役で、18億8200万円。4位までは外国人で、12億5300万円で5位だったソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長が日本人の首位となった。
 高額報酬の役員数の増加には理由がある。経営への責任感を強める観点から、役員に①自社株式で報酬を支給②将来、決められた価格で自社株式を買う購入権を与える―などの企業が増えている。
 コロナ禍での金融緩和で株式市場には大量のお金が流れ込んだ。これにより昨年以降、株価は急上昇。「役員は同じ株数をもらっても、金額で換算すると報酬は大幅に増えている」(東京商工リサーチの坂田芳博課長)のだ。
 ソニーグループの吉田氏は21年3月期に株式で5万株、株式購入権で15万株分の報酬を得た。これは前期と同じ。ただ19年6月末に5648円だったソニーの株価は20年6月末には7384円に上昇。ソニーは毎年6月末の株価を株式での報酬の算出に採用しており、21年3月期の株式関係の報酬は7億円と前期の約5.6億円から大幅に増えた。

◆赤字や不祥事も影響なし

 コロナ禍の金融緩和で業績や内実に見合わないほど株価が上昇した企業は多い。赤字や不祥事を起こした企業でも役員報酬には影響が出ない企業もある。報酬が1億円以上の役員数は、2期連続赤字の日産自動車が5人と前期と同数。検査不正が発覚した三菱電機も前期は1人だったが、21年3月期は7人に増えた。
 同一企業内の報酬格差も大きい。ソフトバンクのシガース氏の報酬は、従業員の平均年収(1404万円)の83倍、株式などを含む報酬総額との比較では133倍に上る。

◆経営者は責任を果たしたか?

 経済低迷の打撃をもろにかぶる一般の働き手の給与は厳しい。厚生労働省によると、全産業平均の月間給与総額は20年は31万8000円で19年を1.2%下回った。コロナが直撃し非正規も多い飲食業は5.5%減の10万2000円だ。
 一般の働き手に株を買う余裕はないのが実情。役員との収入格差の拡大について日本総研の山田久副理事長は「日本の経営者報酬は米国などに比べ、まだ少ない」としながらも「日本経済はこの20年ほとんど成長しておらず、経営者らが経済を豊かにするという本来の責任を十分果たしてきたか疑問が残る」と指摘。
 その上で「今後は政府も経営者も労働組合も力を合わせ、一般の働き手の賃金が増える環境をつくれるかが課題になる」と言う。

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