麻生副総裁「温暖化で北海道の米がうまくなった」発言で疑われる自民温暖化対策への本気度

2021年10月28日 06時00分

北海道小樽市で街頭演説する自民党の麻生副総裁=25日午後 (共同)

 自民党の麻生太郎副総裁が、「温暖化のおかげで北海道の米がうまくなった」と発言。岸田文雄首相も同趣旨の発言をした。言うまでもなく地球温暖化は世界各国にとって深刻な問題で、自民党政権も「カーボンニュートラル社会」を訴えていたはず。わざわざ衆院選の最中に、党の総裁・副総裁が「温暖化は悪いことばかりじゃない」と語ってしまうとは、温暖化対策の本気度が大いに疑われることになりそうだ。(宮畑譲、中山岳)

◆麻生氏「昔は『厄介道米』といわれた」

 「年平均気温が2度上がったおかげで、北海道のお米がおいしくなった。昔、北海道のお米は『厄介道米』と言われるほど売れない米だった。農家のおかげですか? 農協の力ですか? 違います。温度が上がったからです」
 25日に北海道小樽市であった衆院選の自民公認候補との街頭演説。麻生氏は「地球温暖化でいいこともある」例としてこう述べた。いつものべらんめえ口調に手ぶりをつけての熱弁。エネルギッシュに聴衆に語りかけた。

◆北海道農民連盟「生産者の努力を蔑ろにする発言」

 発言にただちに反応したのが、農業者でつくる北海道農民連盟だ。翌26日、「今までの北海道米を作る生産者の努力と技術を蔑ろにするような発言は断じて許されない、強く抗議する」との談話を大久保明義委員長名で出した。同連盟によると、組合員から「冗談じゃない」という怒りの声が多数寄せられ、談話発表に至ったという。
 発言に北海道の稲作農家が憤るのは、寒冷地で米を作る困難を乗り越えてきた歴史があるからだ。
 北海道庁の資料などによると、北海道では江戸時代に開田したとされるが、度重なる凶作で定着しなかった。1873(明治6)年には、「北海道稲作の父」と呼ばれる中山久蔵氏が初めて稲作に成功したが、開拓当初は北海道が米作りに向かないとみられて作付面積はあまり増えなかった。
 1892(同25)年に稲作が奨励され、生産技術も向上していくにつれて全道に稲作が拡大していった。1961年には、新潟県を抜いて収穫量が日本一に。しかし、79年に政府買い入れ価格に銘柄間格差が導入されると、北海道米のほとんどが最低ランクとなり、「厄介道米」とやゆされたのは事実だ。
 そもそも、緯度が高い北海道では、気温が低く日照時間も短いため、コシヒカリなど本州以南で生産される品種は育たない。さらに、日本人好みの米は一般的に温暖な気候のほうが育てやすいとされる。米に含まれるでんぷん「アミロース」は適度に低いほうが粘り気が出ておいしく感じられるが、アミロースは稲が温暖な環境で育つと低く、寒冷だと高くなる傾向にあるからだ。

女子ゴルフ「ニトリレディス」で優勝した稲見萌寧選手に贈られた「ゆめぴりか」の米俵=8月29日、北海道小樽市の小樽CCで

 よって、北海道の気候でも育てることができ、アミロースを抑える品種が求められた。80年には優良米を開発するプロジェクトが始まり、8年後には北海道米のイメージを一新する「きらら397」が誕生。その後も人気米となる「ななつぼし」や「ゆめぴりか」などが生まれていった。

◆品種改良、苗の管理、土壌づくりで美味しさ実る

 「北海道の米がおいしくなったのは、品種改良が大きい。さらに農業者、関係団体の努力があり、気象の要因は3つ目だ」。「ゆめぴりか」を開発した上川農業試験場の主査・木下雅文さん(44)が話す。開発に携わった木下さんは、品種改良だけではおいしい米を作れないと強調する。
 「苗や土壌の管理など農家の作り方も大事。ゆめぴりかでは、基準をクリアできないものはブランド米として扱わない。こうしたブランド力を維持するための努力がおいしい米を作っている」

◆謝罪した岸田首相もコメへの気候変動影響は認める

 麻生氏の発言を巡り、岸田文雄首相は26日のBSフジ番組で「お米は関係者の努力によっておいしくなっている。麻生氏の発言は適切ではなかった。申し訳ない」と述べ、なぜか本人に代わって謝罪。とはいえ、岸田氏自らも25日、京都市で農業関係者と車座で意見交換した際に「最近コメの品評会をやると、北海道が上位に食い込んで、東北や北陸が後れを取っている。間違いなく気候変動の結果だと思う」と発言している。
 自民党の総裁、副総裁がそろって「温暖化にもメリットがある」ともとれる認識を示したことになる。危うさはないのか。
次ページ 専門家「温暖化はマイナス影響大きいのに、無責任」
前のページ

おすすめ情報