脳トレにもなる!?大人にこそ読んでほしい絵本の世界 名編集者の10選は

2021年10月28日 07時31分

 「ぐりとぐら」を手にインタビューに答える田中さん=いずれも東京都杉並区で

 コロナ禍で外出や人との出会いが制約され、ストレスを感じている人も少なくないはず。そんな時こそ、絵本を読んで童心に帰り、想像の世界を旅してみては−。絵本をはじめ多数の児童書を世に送り出す「童話屋」(東京都杉並区)を45年前に創業し、今も編集者として活躍する田中和雄さん(86)に「シニアに読んでほしい10の絵本」を推薦してもらった。 (小松田健一)
 童話屋は、田中さんが広告会社勤務を経て一九七六年に創業。絵本のほかに詩集や偉人伝なども手がけ、命の大切さを教える「葉っぱのフレディ」は大ベストセラーとなった。
 サラリーマン時代は絵本とは全く無縁だった。出会いは四十歳のころ。友人の結婚祝いを選ぼうと、図書館で偶然見つけた一冊に心を奪われた。「しろいうさぎとくろいうさぎ」。水墨画を思わせる重厚なモノトーンのようで、表情豊かなウサギが目に飛び込んできた。
 「本を手にしてびっくりした。自分が知っている『桃太郎』や『かちかち山』のようなカラフルで勇ましい絵とは全く違った」。一気に絵本の世界に引き込まれ、脱サラを決めた。「自分は広告会社の人間だったので、絵と文章が一体となる魅力も分かった」
 子どもが絵本を読む効用はよく知られている。「良い絵本は子どもの心の栄養になる」(田中さん)からだ。では、大人になってからでは遅すぎるのかといえば、「そんなことはない。大人にこそ読んでほしい」と力を込める。
 今回の十冊は「内容の優劣ではなく、版権があればぜひとも童話屋で出版したい作品の順位」という田中さんの視点で、ランキングしてもらった=表参照。
 一位は「ぐりとぐら」(福音館書店)。ねずみのきょうだい、ぐりとぐらのカステラ作りをテンポよく描いた傑作だ。七位の「はらぺこあおむし」は五月に死去した米国の絵本作家、エリック・カールさんの世界的ベストセラー。 十位の「しあわせなふくろう」は、老境を迎えたフクロウ夫妻が主人公。「シニアの皆さんが自分に置き換えて、人生を振り返るにはいい作品」と薦めた。
 十冊ともすべて現在も市販されており、初版から五十年を超えるロングセラーも少なくない。「名著は息が長い。出版社は新刊本で稼ぐのが一般的だが、絵本に限ると既刊本でやっていける」と説明する。

童話屋創業者の田中和雄さんのお気に入りの絵本

 絵は共通言語で、言葉が分からなくてもメッセージを伝える普遍性がある。文字がメインの本よりも表現の自由度が高い分、読み手はさまざまな受け止め方ができる。
 田中さんは大人にも絵本を薦める理由を「絵本は基本的に絵から情報を得る。そこに込められた意味を読み取ったり、解釈を加えたりといった思考作業を通じて、想像力や発想力を養うことができる」と話し、「脳トレにもなる」と付け加えた。
 深く読み進めれば哲学書に匹敵する内容を含むこともあるといい「絵本文化が定着している欧米では、大人も読むべきものとみなされている」。
 絵本には人間だけではなく、さまざまな動物や植物、時には幽霊や妖怪も登場する。田中さんは笑顔で語る。
 「絵本の中では人種や民族の差別はない。それを子どもに読み聞かせるのは、大人にとっても良い勉強になる」

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