最高裁の裁判官をチェックしよう 対象11人のこれまでの判断は? 衆院選と同時に国民審査 

2021年10月28日 18時54分
 31日の衆院選と同時に行われる最高裁裁判官の国民審査が注目されている。「夫婦別姓」や「一票の格差」など世間の関心が高い問題で、最高裁が「憲法の番人」の役割を果たしていないという不信感も背景にある。専門家は「民意が届く司法にするため、裁判官にも厳しいチェックを」と呼び掛ける。

◆辞めさせたければ「✕」記入

 国民審査は、有権者が辞めさせたい裁判官の欄に「×」を書き、有効投票の過半数に達すれば罷免できる憲法上の制度。×印以外を記入すると無効になる。
 最高裁裁判官は内閣に任命され、就任後最初の衆院選で審査を受ける。信任されれば再審査は10年を経た衆院選時だ。

最高裁裁判官の過去の判決などをまとめたリーフレットを手にする日本民主法律家協会の沢藤統一郎弁護士㊧と大山勇一弁護士。同協会のホームページでも見られる=東京・霞が関の司法記者クラブで

 日本民主法律家協会・国民審査プロジェクトチームの沢藤統一郎弁護士は「一度信任されたら、ほとんどは再審査前に定年を迎える。特定の裁判官を罷免できる機会は、現実的には1回」と重要性を語る。

◆「批判の目を光らせよう」

 一方、選挙の投票とは違い、国民審査では何も記入しなければ「信任」となる点や、審査する国民に十分な判断材料がないこともあり、1949年の制度開始以降、罷免された例はない。2003年以降、不信任率は高くて9%程度で、「形骸化」との批判もある。
 「衆院選で争点になっている問題も、最高裁が違憲判断をしていれば見直されていた可能性がある」と沢藤弁護士。「国民が批判の目を光らせないと、任命権を持つ内閣の顔色を見る裁判官が増える。どの裁判官が過去にどんな判断をしたかを知り、審査に臨んでほしい」と訴える。

◆「夫婦別姓」認めない規定 4人が合憲、3人は違憲

 今回、国民審査の対象となる裁判官は11人。国民の関心が高い問題を巡り、これまでどのような判断をしてきたのか。
 「夫婦別姓」を認めない現行の民法と戸籍法の規定について、大法廷は今年6月、「合憲」と判断した。合憲としたうち深山卓也、岡村和美、長嶺安政の3氏は補足意見で「女性の有業率などと併せて考えても、規定が憲法に反する状態とは言いがたい」と述べた。
 一方、草野耕一氏は「選択的夫婦別姓導入で向上する国民の福利は、減少する福利よりはるかに大きい」、三浦守氏は「夫婦同姓は明らかに女性に不利益」、宇賀克也氏は「規定は不当な国家介入」などと違憲の判断を示している。

◆幅広い問題で問われる最高裁の判断

 「一票の格差」が最大3.00倍だった19年参院選を巡る大法廷判決では、林道晴、深山、岡村の3氏が合憲と判断。これに対し、宇賀氏は「国会は格差が生じない制度を設計しなければならず、合理的な説明がなければ違憲状態と言わざるを得ない」と反対意見だった。
 雇用や沖縄、性的少数者(LGBT)などの問題に関する小法廷の判断も注目を集めた。契約社員に退職金が支給されない非正規格差を巡り、昨年10月の判決は「不合理な格差」には当たらないと判断。林氏は「使用者の裁量判断を尊重する余地は比較的大きい」と会社側の主張を認める補足意見に同調した。
 米軍普天間飛行場移設に伴い、国が沖縄県にサンゴ移植を指示したことを「適法」とした判決では、宇賀氏が反対意見で、埋め立て予定海域に軟弱地盤が見つかったことを挙げ「県の対応が違法とは言えない」と指摘。性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するには手術が必要とする法律の規定を巡っては、全員一致で「合憲」だったが、三浦氏は補足意見で「手術は憲法で保障された身体を傷つけられない自由を制約する」として違憲の疑いがあると示した。(小沢慧一)

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