温暖化対策は「公正な移行」がキーワード 産業構造転換でも雇用を保障 与野党が公約で言及 NPOが事例集

2021年10月28日 19時30分
 地球温暖化対策に伴う産業構造の転換が見込まれる中で、仕事を失う人の雇用などを保障しながら転換を目指す「公正な移行」が、日本でも論点に上りつつある。衆院選でも複数の政党が公約で言及。対策に取り組むNPO法人は世界の先進事例集を作り、国内での議論活性化を求めている。

◆特定の産業で雇用失われる恐れ

 二酸化炭素(CO2)を主とした温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を抑えるには、化石燃料を使う火力発電所やガソリン車などをなくす必要があり、関連する産業で働く人たちが仕事を失う恐れがある。
 そうした産業は地域経済の柱の場合が多いだけではなく、仕事は労働者の誇りや生きがいに深く関わる。産業転換には丁寧な議論と計画が求められ、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」でも、前文で労働力の公正な移行を掲げている。

◆「脱原発」でも言及

 衆院選の公約では、脱原発を前提とした温暖化対策を訴える立憲民主党とれいわ新選組が、原発立地地域での公正な移行を明記。社民党も廃炉を目指す原発周辺の雇用、経済対策支援に触れた。共産党は「貧困と格差の是正と一体」で対策に取り組むとして公正な移行に言及。自民党、公明党は「公正な移行」という言葉こそ使っていないが、自動車関連企業の業態転換を支援する姿勢を示した。

◆NZでは多数の市民交えて長期計画議論

 高度経済成長を支えた自動車業界からは雇用の喪失を理由に、電気自動車(EV)への急速な転換に異論を唱える声が上がっており、NPO法人「気候ネットワーク」は公正な移行に取り組まなければ「温暖化対策にブレーキが踏まれる」と危機感を抱く。
 気候ネットワークは9月、公正な移行の事例集を発行し、石炭産業からの脱却を図る欧米などでの12例を紹介。政府主導や市民参加型など地域によって手法はさまざまで、ニュージーランドでは長期計画の議論に1000人超の住民や教育、労働、先住民族などの団体が参加した地域があった。
 執筆を担ったエバン・ギャッチさんは「公正な移行では、市民や政府、企業などが協力的で、積極的な役割を担う」と指摘。社会的な弱者のことも考えられているといい、「世界では、気候変動対策による移行が起こるかどうかではなく、方法が公正かどうかの議論になっている。成功例は増えてきた」と語った。
 事例集は気候ネットワークのウェブサイトへ。(福岡範行)

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