新橋芸者2年ぶり「東をどり」 映像と舞台で粋に復活 お座敷体感!「コロナから街の元気取り戻す」

2021年10月29日 06時34分

スクリーンに映し出された「東をどり」の映像

 コロナ禍で昨年は中止された新橋芸者の晴れ舞台「東(あずま)をどり」が二十七、二十八日の二日間、二年ぶりに中央区銀座の新橋演舞場で開かれた。コロナ対策として、料亭で踊る芸者たちの映像も上映。なかなか見ることができない料亭のお座敷を体感してもらう新方式で、あでやかで粋な伝統行事が復活した。
 一人の芸者が鏡台に向かい、紅をさす。舞台に設けられた大型スクリーンには続けて、料亭で踊る芸者たちが映し出された。東をどりは今年で九十六回目を迎えたが、映像の上映は初の試みになる。

新橋演舞場内に設置されたスクリーン

 東をどりは一九二五(大正十四)年、新橋演舞場のこけら落としで始まった。新橋芸者が唄や踊りを披露する恒例行事として定着し、近年は毎年五月に公演を開いてきた。
 しかし、コロナ禍で昨年は中止を余儀なくされた。銀座周辺の料亭や芸者でつくる「東京新橋組合」頭取の岡副(おかぞえ)真吾さん(60)は「この一年半、街から明かりが消え、新橋花柳界は開店休業の状態」と語る。経営する料亭「金田中」の売り上げは約六割減少。芸者が呼ばれる宴席も、ごくわずかになった。
 組合は今年も五月の開催を見送ったが、中止ではなく延期と位置付けた。岡副さんは「東をどりは街の活力のような行事。去年と違ってコロナウイルスの知見も蓄積された。街の元気を取り戻すため、どんな形でも開こう」と考えた。

料亭の座敷にアヤメを飾って撮影された映像

 感染予防で公演時間を短縮し、楽屋の密集も緩和するため、芸者の唄や踊りを映像化し、演舞場で上映する方式を思い立った。ワクチンの普及も見込み、十月末の開催を決めた。
 映像は、そのまま舞台を収録するのではなく、お座敷の雰囲気を味わってもらうため、料亭の「金田中」と「新喜楽」で七月に二日間かけて撮影した。
 ベテランから若手まで約四十人の芸者が「新橋花柳界の四季」を表現した。日本画家の横山大観による富士山のふすま絵や、アヤメの生花を並べた座敷など、季節ごとの料亭のしつらえも楽しめる内容になっている。

東京新橋組合の岡副真吾頭取

 総合演出は、歌舞伎などの振り付けをする日本舞踊尾上流四代家元の尾上菊之丞さん(45)が担当。「演舞場を一つの大きな座敷に見立てて、踊りと音楽、料亭の秘蔵の品も合わせ、視覚的な雰囲気を楽しめる」と説明する。
 公演は一日四回ずつ。芸歴五十年以上の小喜美(こきみ)さんは「お座敷がない間、こういう時こそ稽古を、と思って過ごしてきた。やっと披露の場ができた」と意気込んで舞台に臨んだ。

新橋演舞場で2年ぶりに開催された東をどりのフィナーレで勢ぞろいした芸者ら

 マスク姿の観客が間隔を空けて座り、最初に三十七分間の映像を上映。続けて生の舞台に約四十人の新橋芸者が勢ぞろい。「今日が初舞台の若い芸者も、五十回目の芸者も、皆一様に舞台から皆さまにごあいさつできる喜びをかみしめております」と口上を述べた。三味線や太鼓に合わせてフィナーレの踊りを披露し、公演の幕を引いた。
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 上映された映像は今後、インターネットで有料配信し、ブルーレイディスク(BD)も販売する。
 文・宮本隆康/写真・内山田正夫 池田まみ
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