自民の「顔」に追い風なく コロナ対応、民心に響かず 

2021年11月1日 06時00分
自民党本部の開票センター当確者の名前にバラを付ける岸田首相(右から2人目)

自民党本部の開票センター当確者の名前にバラを付ける岸田首相(右から2人目)

 今回の衆院選を前に、新型コロナウイルス感染症対応などを巡って国民の不信を招いた菅義偉前首相から岸田文雄首相に「選挙の顔」を替えた自民党は、公示前議席を下回る見通しとなった。政策や政治姿勢を巡る不満は根強く、与野党の勢力差は縮まった。安倍・菅政治に連なる岸田政権への有権者の見方は依然、厳しいままだ。(山口哲人)

◆コロナ対策でささくれだった民心

 「日本はコロナ対策が世界で一番うまくいった方だが、その間に相当鬱積うっせきされた気持ちがささくれだった民心になってしまい、我々が受け止めきれなかった」
 自民党の甘利明幹事長は31日夜の日本テレビ番組で、議席減の要因をそう分析した。
 9月の自民党総裁選を制した首相に対する党内の期待は、コロナ禍で強まった与党への逆風を弱め、衆院選勝利に導くことだった。
 首相は10月4日の新内閣発足後、所信表明演説と各党代表質問を行うにとどめ、野党が求める予算委員会などに応じないまま衆院を解散。さらに投開票まで17日間という戦後例を見ない超短期決戦に踏み切った。世論の支持を得やすいとされる就任直後の「ご祝儀相場」が下がらないタイミングなら戦いを優位に進められるという判断があったことは間違いない。

◆首相交代は「表紙の付け替え」と受け止められ

 ただ、追い風は吹かなかった。首相交代の効果が薄かったのは、安倍・菅政権の「表紙の付け替え」だと有権者に受け止められたからだ。
 先の総裁選で、首相は競争重視の新自由主義から決別し、中間層への手厚い支援を柱とする「新しい資本主義」の実現を掲げた。しかし、就任後は経済成長を優先する考えを示し、安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」をほぼ踏襲する姿勢を鮮明にした。
 安倍氏らが待望する敵基地攻撃能力の保有検討や改憲にも意欲を示し、党人事では衆院選公約をまとめる政調会長に保守派の高市早苗氏を充てた。報道各社の内閣支持率は菅政権後期から持ち直したものの、50%前後にとどまった。

◆安倍・菅政治と地続きの岸田政権

 「政治とカネ」問題や行政私物化疑惑でも、岸田政権は安倍・菅政治と地続きだと印象づけた。
 首相は、金銭授受疑惑で閣僚を辞任した甘利氏を幹事長に起用。選挙戦の街頭演説でも、森友・加計学園や桜を見る会の問題といった長期政権の「負の遺産」に触れず、政治不信に正面から向き合おうとはしなかった。「説明しない政治」を象徴する日本学術会議の会員候補任命拒否や2019年参院選広島選挙区を舞台にした買収事件を巡る巨額資金提供の問題でも、国民の疑問に答えなかった。
 安倍・菅政治の継続に否定的な民意がにじんだ今回の衆院選。甘利氏の小選挙区敗北によって、説明責任の重要性が改めて示された。だが、首相は31日夜のフジテレビ番組で「政治とカネ」問題への対応について「考え方は変わらない」と強調し、再調査などを拒む姿勢を崩さなかった。

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