旧ソ連タジキスタンで反体制派が活発化、タリバン復権の影響か

2021年11月1日 17時00分

10月23日、タジク南部で行われたテロ対策の軍事演習。背後がアフガン国境

 アフガニスタンの実権をイスラム主義組織タリバンが掌握したことで、中央アジアの旧ソ連タジキスタン(タジク)の緊張が高まっている。タジクではタリバンに近い反体制派が活発化し、30年近く続く専制体制が揺らぐ恐れがある。(ドゥシャンベで、小柳悠志、写真も)
 「アフガンは国際的なテロリズムの温床となった」。タジクのミルゾ国防相は10月下旬、ロシアを含む旧ソ連圏の軍事同盟の対テロ演習でこう演説した。ミルゾ氏はシリアやイラクで拡大した過激派組織イスラム国(IS)を引き合いに、タリバンを「テロ集団」と呼んだ。
 タジクはソ連崩壊後に内戦が起き、多くの国民がアフガンに流出した。アフガンの総人口(4000万人弱)のうちタジク人は4割に達するとの見方もある。両国はイラン系民族が中心で、ロシア高等経済学院のカザンツェフ教授(国際関係大主任研究員)はアフガンとタジクを「へその緒で結ばれた関係」と表現する。
 近親国でありながら、なぜタジク政府はタリバンを嫌うのか。

ラフモン大統領の写真が飾られているドゥシャンベ市街

 首都ドゥシャンベの街角で見かけるのが1994年から大統領を続けるラフモン氏(69)の写真。土産物店の店員フワイドさん(25)によると、各家庭でもラフモン氏の写真は飾られているという。中央アジアで多い指導者崇拝だ。
 ラフモン政権にとって、反体制派のイスラム過激派とつながりがあるタリバンは悩みの種。国内の動揺を防ぐためにも、タリバンの存在は認められないとの立場だ。一部の欧米メディアはタジクが、アフガンの旧ガニ政権の幹部をかくまい「反タリバンの牙城になった」と指摘する。
 地元記者のアミールさん(56)によれば、多くの国民はソ連時代に女性の地位向上や教育の普及が進んだとの認識があり、「タリバンのような人権軽視の勢力は容認できない」と語った。タジクにとってロシアは安全保障における最大の後ろ盾で、ドゥシャンベにはロシア軍駐留基地がある。

◆ロシアの対応は ~カザンツェフ教授に聞く

 ロシア高等経済学院のカザンツェフ教授は、タジクが内憂外患に陥っていると指摘する。
―タジクでイスラム過激派が活発化する可能性は。
 「可能性は高い。パシュトゥン人が母体のタリバンはタジク人に影響を広げようとしてきた。タリバンは既にタジクとの国境付近で過激派の戦闘員を積極的に利用している。タジクは新型コロナウイルス禍で経済が低調。ラフモン大統領は息子に権力移譲を進めようとする最中で、国内情勢は不安定だ」
―ロシアは最終的にタリバンを承認するのか。
 「ロシアが、いつ、どのように承認するかは難しい問題だ。ロシアは現在もタリバンをテロ組織とみなし、国連の決定がなければ解除することはできない。ロシア政府内には、タリバンに穏やかな態度を取る勢力がある一方、厳しい対応を求める意見もある。いずれにせよ、ロシアはタジクの体制が脅かされないよう、タリバンと交渉を進めているところだ」

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