最高裁裁判官の国民審査「判断材料が少ない」 裁判での判断まとめ動画を配信すれば? 資料の参照は?

2021年11月3日 06時00分

投票用紙に記入する有権者=東京都港区で

 10月31日投開票の衆院選と同時に行われた「最高裁判所裁判官国民審査」では、2017年10月の前回衆院選以降に任命された裁判官11人全員が信任された。11人に付けられた「×」印の割合はそれぞれ7.9~6.0%。過半数の「×」印で罷免されるが、これまで全員が信任されている。ただ「最高裁裁判官にふさわしいか判断するための材料が少ない」という声も。自己紹介動画を配信するなど、工夫すべきだという意見も出ている。(梅野光春)
 国民審査は1949年に始まり、今回で25回目。今回の審査で不信任率が最も高かったのは深山卓也氏の7.9%。続いて林道晴氏が7.7%、岡村和美氏と長嶺安政氏が7.3%と、計4氏が7%超だった。この4氏は今年6月、夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定を「合憲」と判断しており、今回の審査で「×」を付けるよう呼び掛けるインターネット上の運動が起きていた。
 国民審査は最高裁裁判官が任命された後、最初の衆院選時に行われ、信任されたら10年間は審査対象から外れる。明治大の西川伸一教授(政治学)は国民審査の意義を「最高裁の裁判官は法律が憲法違反ではないか審査するが、法律をつくる国会議員と違って選挙がない。国民審査は、最高裁の民主的な正当性を保つためにある」と解説する。
 対象となる裁判官の略歴は、衆院選の候補者と一緒に、新聞紙サイズの選挙公報で紹介された。本紙は10月29日付朝刊社会面などで、各裁判官の過去の判断や意見を紹介した。
 とはいえ今回のように対象者が11人もいたら、それぞれのプロフィルを覚えるのは大変。「資料を事前に見ても、審査の紙を前にしたら、誰がどんな裁判官かこんがらがった」などの声も聞かれた。新聞記事の切り抜きや、公報を投票所に持ち込んでもよかったのだろうか。
 東京都選挙管理委員会によると、公職選挙法に禁止する条文はなく、資料の持参や参照はOK。ただ「公報は衆院選の候補者や政党の名前も掲載する。特定の候補者の欄が、他の有権者に見えるよう持ち歩くと、投票を誘導している恐れがあるとして、遠慮を求めることもありえる」と担当者は話す。実際の判断は、投票所ごとの「投票管理者」に任されている。
 スマートフォンの利用はどうか。都選管は「投票所で記入済み投票用紙を撮影して候補者の陣営に見せ、投票の対価としてお金をもらう『事後買収』につながる恐れもある」と勧めていない。「携帯電話使用は遠慮を」とウェブサイトで呼び掛ける自治体もある。
 西川教授は「国民審査の投票では、事前に公報を見て『×』と考えた裁判官をメモして持参するよう呼び掛けるなど、選管に改善できる点がある」と話す。さらに裁判官とは縁遠い有権者のために「自己紹介やこれまでの裁判での判断をまとめた動画を配信し、有権者に判断材料を提供するのはどうか」と提案している。

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