衆院選 検証(上)自民にくすぶる責任論 横浜市長選の余波

2021年11月3日 06時54分

選挙期間中、自身のビラを配りながら有権者の話を聞く坂井さん=横浜市戸塚区で

 「二十年以上にわたる自公連携が台無しだ。反党行為に等しい」−。衆院選の選挙戦後半、自民党県連は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。5区(横浜市戸塚、泉、瀬谷区)の自民前職・坂井学さん(56)が、「比例代表は国民民主へ」と印字された公選はがきを有権者に送付したことが発覚。「坂井さんは市連会長であり、県連会長代行でもある。自覚はあるのか」と県連幹部は激怒した。
 関係者によると、党による公示前の世論調査で、坂井さんは立憲民主の対抗馬に「結構な差」で負けていた。5区は元民主党衆院議員・田中慶秋氏の影響力が強く残り、国民民主がその系譜を継ぐ。坂井さんは選挙後に「支援者にはがきを渡したら、そのような形になった」と説明したが、公明との連携を脇に置き、かつてのライバルの残照を頼るほど戦況は切迫していた。
 そもそもの経緯は八月の横浜市長選にさかのぼる。国民系の地方議員らは、元自民党県連会長の小此木八郎さん(56)を支援。その代わり、衆院選で自民の一部が国民を裏で支援する「密約」を交わしたという。効果の程度は不明だが、坂井さんは衆院選小選挙区で辛勝し、国民も唯一の県内候補が比例復活した。しかし、党内外の「信用」という意味で代償は高くついた。
 市長選の影響は1区(同市中、磯子、金沢区)でも見られた。新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言中に、東京・銀座のクラブを訪れていたとして自民を離党し、無所属で出馬した松本純さん(71)の落選原因について、支援した与党国会議員は「銀座クラブ問題だけではない」と分析する。
 この議員は衆院選応援に駆けつけた際、有権者から市長選を巡って「菅(義偉)さんが大変な時に、地元は何をやっていたんだ」と怒られたという。自民市連が支援候補を巡り、小此木さんか、現職(当時)として四選を目指した林文子さん(75)かで割れたことへの批判だった。「市長選で、熱心な支援者ほど自民に嫌気がさした。衆院選には余波どころか大波が来た」
 一方、うまく「波」を鎮静化させたのが3区(同市鶴見、神奈川区)。小此木さんの地盤で市長選騒動の「震源地」だったが、後継に指名された新人中西健治さん(57)は「何でもやります」と支援者に宣言し、実際に地元市議らの助言を聞いて活動したという。
 小此木さんも選挙期間中に奔走し「バトンタッチ」に尽くした。神奈川区選出の梅沢裕之県議は、取材に「最初は地域に受け入れられるか心配だった。でも中西さんはいい人なんだ」と評価した。中西さんは、他の候補の票を全て足しても中西さんの得票が上回る「完勝」だった。
 一方、5区の問題は選挙後もなおくすぶる。県連・市連では「そもそも坂井さんは、市長選で敗北した責任も取っていない」と蒸し返す動きも。県連幹部は「本来なら反党行為で処分もの。坂井さんの役職辞任を求める声が高まるだろう」と語った。(志村彰太)
  ◇ 
 十月三十一日に投開票された衆院選で、県内は接戦の選挙区が多く、終盤まで緊迫した展開が続いた。各候補・政党が繰り出した戦略の裏側に迫り、県内の選挙戦を総括する。
衆院選2021
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