「酒都立石」再開発に賛否 11.7 葛飾区長・区議選 問われるまちづくり

2021年11月4日 07時11分

総菜店や居酒屋が並ぶ京成立石駅近くの商店街=葛飾区立石で

 区長・区議選の投票日を七日に控える葛飾区。中心地の立石地域では「のんべえの酒都(しゅと)」の街並みが、再開発で高層ビルが並ぶ風景へ変わろうとしている。区や再開発を推進する地権者は防災対策やにぎわいづくりの契機と期待するが、住民には「下町の歴史や記憶が失われる」と反対の声もある。「葛飾の顔」にふさわしい街づくりに対する候補の訴えが注目されている。(太田理英子)
 京成立石駅を挟んで広がる商店街には、昭和の雰囲気が漂う居酒屋や総菜店が軒を並べる。千円でべろべろになるほど酒を飲める「せんべろの街」として知られる一方、路地が狭く木造建物の密集地で災害時の危険性が指摘されてきた。
 再開発事業の協議は、来年度末の完成に向け整備が進む立石駅高架化事業に合わせ、駅北口、南口の東西の三地区ごとに一九九〇年代に始まった。総再開発面積計四・五ヘクタール。今はほとんどが商店街だが、地上三十階以上の建物を含むビル五棟が建ち、マンションやスーパーなどの商業施設が入る構想。区は北口の一棟に総合庁舎移転を計画する。
 「下町の温かさがある街並みは残ってほしかった」。北口の地権者で戦前から続く居酒屋「鳥房(とりふさ)」を営む水沢昭さん(76)は寂しそうだ。北口地区市街地再開発組合員である地権者百人のの多くが反対から容認に転じた。組合担当者は「自然災害が多い中、建物が老朽化したままでは不安だと考える人が増えたようだ」。
 都は木密が解消し「防災性向上に資する」などとして今春、再開発事業を認可した。着工は二〇二三年度。水沢さんは「もう流れは止められない。移転を考えているが、お客さんが来てくれるか…」と不安げだ。

京成立石駅北口の再開発ビルのイメージ。2023年度に着工、28年度に竣工(しゅんこう)を予定している=立石駅北口地区市街地再開発組合HPより

 南口二地区も事業認可申請に向け協議中だ。駅の南北に広がる「立石駅通り商店会」副会長で、靴店を営む細谷政男さん(72)は「せんべろもいいけど、それだけで街は良くならないからね」。南口西地区の地権者。大型商業施設に客足を奪われ、街のにぎわいを取り戻すのは難しいと考え、再開発に前向きだ。後継者問題などで店をテナント貸しに切り替える人も目立つ。「将来を考えて再開発を受け入れる人も出てきた」
 一方、再開発頼りのまちづくりへの異論もある。立石在住で「のんべえの聖地を守る会」事務局の塔島麦太さん(26)は「防災が課題としながら行政は対策をとらず、再開発ありきで進めてきた。歴史や食文化がある町をどう守るか、知恵やお金を使うのが行政の務めだ」。再開発中止を求めて署名活動を続ける。
 北口再開発の総事業費九百三十二億円の七割弱が都や国の交付金。区の庁舎移転整備費は二百六十億円に上る。塔島さんは「優先すべき事業がある」と巨費を投じることを疑問視する。
 区長選に立候補した現職青木克徳さん(72)は「立石は下町としての魅力を生かしていくべきだが災害に脆弱(ぜいじゃく)」と再開発を推進し、駅前への庁舎移転は利便性が高くなると訴える。新人の元区議梅田信利さん(59)は「税金が入らないとままならない無理繰りの再開発だ」と批判し、別の場所への庁舎移転を掲げている。

関連キーワード


おすすめ情報

東京の新着

記事一覧