衆院選 検証(中)菅前首相の戦いと影響力 「再評価される」支持熱く

2021年11月4日 07時12分

公示日、上永谷駅前での出陣式で観衆に囲まれる菅さん=横浜市港南区で

 支持率が低迷して一年で退陣したばかりとは思えない熱気があった。「最優先は新型コロナウイルス対策と、私は覚悟を決めて取り組んだ。状況は一変した。やっぱりワクチンだったじゃないですか」。街頭で前首相の菅義偉さん(72)が訴えると、「そうだ」と賛同の声や拍手が湧く。通り掛かりの高校生も足を止める。どの遊説先も大観衆で人だかりができていた。
 2区(横浜市港南区、南区、西区)で九選を果たした菅さんは選挙期間中、全国から応援に呼ばれたが、自身の選挙区にも何度も帰った。これだけ地元で活動したのは二〇〇九年以来。公示日には三つの区それぞれで出陣式を行い、南区の横浜橋通商店街を歩いてあいさつ回り。夜は出陣式をした港南区の上永谷駅に戻り、聴衆の記念写真の求めに柔和な笑顔で応じた。
 「あんなに頑張ってた人はいない」「新型コロナで大変な時によくやった」。地元有権者からは同情的な声が聞かれ、変わらず支援する人も多かった。退陣表明時、千人を大きく上回っていた県内の新型コロナ感染者はその後減少し、自身の政策の成果に手応えを強めていったように映った。なぜ首相を辞任したのか、素朴な疑問も残るほどだ。
 出陣式へ応援に来た南区の主婦(48)は首相時代の菅さんを「口べた。しゃべりがうまかったら、もうちょっと伝わった」と評した。コロナ対策、携帯電話料金の引き下げ、カーボンニュートラル宣言。選挙戦の演説はごく真面目で、他候補の応援でもアドリブは少なかった。ともすれば伝わりづらい話しぶりだが、ともに演説する腹心が持ち上げる光景がしばしば見られた。
 菅政権の官房副長官で5区で当選した坂井学さん(56)は、演説であえて「菅総理」と呼んだ。4区で敗れ、比例復活した山本朋広さん(46)は「絶対再評価されると信じている」。首相再登板を期待しているようにも響く言葉だった。
 実際、菅さんの首相辞任で変わるともみられた県内自民衆院議員の勢力図は、13区で党幹事長の甘利明さん(72)がまさかの小選挙区落選となった一方、菅さんが推した古川直季さん(53)が6区で接戦を制して初当選するなど、菅さんの影響力が残る形になった。
 「辞めたいと思ったことはないですよね」。公示前の取材で、退陣表明以前に首相を辞めたくなったことはあるかとの質問に、菅さんはこう答えていた。ワクチン接種の広まりで手応えを得た今、読みづらい表情の奥で何を展望しているのだろうか。(神谷円香)
衆院選2021
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