デジタル遺品 普段の備えは 端末に残る写真・預金…

2021年11月4日 07時30分

メモリーチップをスマートフォンから取り出すスタッフ=いずれも東京都港区のデジタルデータソリューションで(一部画像処理)

 家族が亡くなった後、使っていたスマートフォンから思い出の写真を取り出そうとしたが、IDやパスワードが分からずログインできない−。社会のデジタル化が進み、そんな問題に直面する人が増えている。画像や住所録、インターネット銀行の預金など、もしもの時に端末に残るさまざまな「デジタル遺品・遺産」。普段からどのように備えればいいのか。 (小田克也)
 「ここで、パソコンやスマホからデータを取り出しているんです」。東京・六本木の「デジタルデータソリューション」。下里和可奈マーケティンググループ長が案内してくれた。
 技術者がスマホの裏ぶたを取り外し、ピンセットのような器具を使って部品を一つずつ、つまんで外していく。電話番号やメールアドレスなどのデータが詰まっているメモリーを取り出し、解析するためだ。
 データ消失などのトラブル解決に向けた各種サービスを展開する同社。パスワード解除やデータ復旧により、デジタル遺品を取り出すサービスを二〇一七年から始めたところ、今年七月までに約二千件の相談があった。写真や住所録、日記、趣味の動画や画像、会社の取引先の名簿…。下里さんは「思い出のデータを取り出したいという相談が一番多い」と言う。
 スマホやパソコンを使う中高年は多い。昨年の総務省の調査では、スマホの場合、六十代でも六割以上、七十代でも三割以上が利用している。セキュリティーは強化される傾向にあり、ロックやパスワード解除のハードルは高い。同社ではこれまで数百件のデータ抽出に成功しているが、「解析に数年かかるケースも少なくない」(フォレンジクス事業部)。費用は一件あたり三十万円程度かかるという。

パソコンのハードディスクにあるデータを解析するスタッフ

 思い出のデータ取り出し以外にも、さまざまな依頼が持ち込まれる。
 家族で会社を経営していたが、会計データを自分のパソコンに入れていた夫が亡くなり、妻からパスワードの解除を頼まれた。
 母親が生前、子どものために「財産の三割を相続させる」と発言したのをタブレット端末で動画撮影したが、端末が壊れてデータを取り出せなくなり、「それがないと自分の相続分が減ってしまう」と復元を依頼されたこともあった。

◆ID・パスワード 紙に残す手も

 ネット銀行やネット証券にある預金などのデジタル資産を相続する際は、金融機関に問い合わせて手続きを進めることになるが、故人から生前に知らされていないと、遺族が気づかない可能性がある。
 また、故人が利用していた音楽配信や雑誌の購読契約、通販などの継続型の課金サービスは、解約しなければ料金の支払いが続くことも。会員制交流サイト(SNS)も放置すれば、なりすましや内容の改ざんなど不正利用されかねない。
 下里さんは「生前にログインのためのIDやパスワードを含めて引き継ぐデータと、そうでないデータを分けておいたほうがいい」と助言する。
 この問題に詳しいジャーナリストの古田雄介さんは「誰もが亡くなる直前までデジタル機器を使う。デジタル遺品を残さないのは不可能」と話す。デジタル遺品・遺産になりそうなものをリスト化した上で、「名刺大のカードにパスワードを書き、修正テープを貼ってふだんは見えないようにしておき、家族が分かる場所に保管しておくほうがいい」と勧める。
 さらに「スマホの最初の画面に自分の口座のある銀行など大事なアプリを並べておけば、家族がログインして重要なものと気付くはず」とアドバイスする。

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