病気や障害のある子の「きょうだい児」の思い絵本に 6歳の園児が母らと出版 兄慕いつつ寂しさも

2021年11月5日 17時00分
 病気や障害のある子どもの兄弟姉妹「きょうだい」の思いを伝えようと、横浜市西区の保育園児栄島 一歩えいしまかずほちゃん(6)が、絵本「ぼくはチョココロネやさん」(生活の医療社)を母とともに出版した。作品では、がんの後遺症と闘う兄を慕いつつも「いつもお兄ちゃんばかり」と親の対応に寂しがったり、大好物のチョココロネを母親と作って喜んだりと、自身を模した姿が優しいタッチで描かれている。(神谷円香)

絵本「ぼくはチョココロネやさん」で、主人公が「あーつまんない!」とすねてしまう場面

◆小児がんだった兄、今も通院

 一歩ちゃんの兄四郎さん(14)は3歳の時に小児がんを発症。治療は終えたが、中学生の現在も自宅で週6日のホルモン注射を打ったり通院したりしている。後遺症と向き合う生活の傍ら、治療法研究支援のためチャリティーのレモネードスタンドを開くなど活発に活動してきた。
 母の佳子さん(50)によると、通院時につききりで介助するなど四郎さんの対応に時間を割かざるを得ないことが多く、結果的に、甘えたい盛りの一歩ちゃんを十分見てあげられないことも少なくないという。

◆高まる「きょうだい児」支援が必要の声

 兄が立ち上げた、小児がん経験者と家族が集う「みんなのレモネードの会」に「子ども副会長」として名を連ねるなど、幼いながらも兄の病気を理解し後押しする一歩ちゃん。だが、兄の通院中に近くに住む祖母と留守番をすることもあり、時には「なんでお兄ちゃんばかり?」とすねてしまう。
 近年医療技術の進歩により、医療的ケアを必要とする子どもが増えている。その兄弟姉妹で親の手が届きにくい「きょうだい児」に対する支援の必要性を指摘する声が高まっている。

◆兄の絵本見て「ぼくも作りたい」

 四郎さんは2年前、自身の活動を踏まえ「ぼくはレモネードやさん」という絵本を出版した。これを見た一歩ちゃんが「ぼくも作りたい」と提案。佳子さんは、一歩ちゃんが大好きなチョココロネを題材に「きょうだい児」の思いを描くことを考えついた。母子で文章を練り、絵は親交があるイラストレーター川尻杏子さん(44)に依頼した。
 主人公は「ぼく」。兄は小さい頃の病気で注射を打っていて、体も疲れやすいけれど「レモネードやさん」もやっているという設定だ。「ぼく」が好きなのはチョココロネで、ママと生地をこねておいしいコロネの完成を目指す。かまってもらえない寂しさを「あーつまんない!」という率直な言葉で表す場面もある。
 佳子さんは「気を付けてはいるが、どうしても目が向かない時もある」と明かす。「頑張っている子だけでなく、周りに複雑な気持ちになっちゃう子がいることを、絵本を通じて伝えたいと考えた」。水彩や貼り絵で柔らかな絵に仕上げた川尻さんは「一歩くんは思っていることをちゃんと表現する。きょうだい児の気持ちを私自身が勉強しながら描いた」と振り返る。

出版した絵本「ぼくはチョココロネやさん」を手にする栄島一歩ちゃん=10月、横浜市西区で


 一歩ちゃんは、照れながらも「みんなに読んでもらいたい」と笑顔で話す。税込み1650円で、生活の医療社のウェブサイトなどで販売中。

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