自転車配達員 労災加入OK フリーの対象拡大、IT関連も

2021年11月8日 08時59分
 仕事が原因でけがや病気をした際に治療費などを補償する労災保険。原則、企業に雇われている人が対象だが、9月から自ら保険料を払うことで、フリーランスで働く自転車配達員やITエンジニアなども加入できるようになった。背景には、雇用されずに働く人が年々増えていることがあり、専門家は「安心して仕事をする助けになる」と加入を呼び掛ける。(熊崎未奈)
 労災保険は、業務中や通勤時にけがをしたり、仕事が原因で病気になるなどした場合に補償が受けられる制度。治療にかかった費用は全額、仕事を休むと休業四日目から給与の八割が給付される。正社員やアルバイトなど企業に雇われている労働者全員が対象。保険料は企業が全額負担する。
 企業と雇用関係がなく、労災保険に入れないフリーランスについては「特別加入」の制度がある。保険料を働き手が払うことで同等の補償を受けられるのが特徴。これまでは、建設業の「一人親方」や個人タクシーの運転手など、業務によるけがや病気のリスクが比較的高い一部の業種に限って加入が認められていた。
 しかし、厚生労働省は四月、芸能従事者やアニメ制作者など四つの業種を新たに追加。九月からは「ウーバーイーツ」などの自転車配達員、システムエンジニアやウェブデザイナーといったITフリーランスも加入を認めた。背景には働き方の多様化がある。内閣府の二〇一九年の調査によると、本業としてフリーランスで働く人は増加傾向にあり、副業として働く人も含めると三百万〜三百四十万人と推計される。
 一般社団法人「ITフリーランス支援機構」(東京)の代表理事、高山典久さん(55)は「安心して仕事をするには補償が必要」と強調する。機構によると、IT分野で働く約六百五十人が、掛け金(保険料)を払って加入する「PE共済会」が一八〜二〇年度の三年間、仕事に関連する病気やけがを理由に所得や入院費などを補償したのは五十件。うち就労不能とされたのは二十一件に上る。長時間のデスクワークで腰痛やけんしょう炎、脳・心臓疾患や精神疾患を起こす人が多いという。
 ITフリーランス向け業務紹介サービス「レバテックフリーランス」の登録者百二人に聞いたところ、「特別加入をしたい、加入を検討したい」という回答は86%にも。高山さんは「フリーにもセーフティーネットが整備されれば、スキルのある人材が新たな仕事に挑戦しやすくなり、国にとってもプラス」と話す。

◆危険度に応じ保険料率設定

 労災保険の特別加入は、業種ごとに組織される「特別加入団体」を通じ、各地の労働基準監督署に申し込む。通常、万が一の際の給付額を算出する基になるのは、一日当たりの賃金額を意味する「給付基礎日額」だ。給与が一定でないフリーランスの特別加入では、三千五百〜二万五千円の範囲で働く人自身が日額を設定する。保険料を決める保険料率は仕事の危険度で違い、ウーバーなどの自転車配達員は1・2%、ITフリーランスは0・3%など。日額が低いほど負担する保険料は安くなるが、休業補償などの給付額は減る。
 日額を五千円とした自転車配達員の場合=表。本人が支払う年間保険料は二万千九百円だ。業務中のけがで仕事を十日間休んだとすると、治療費は通常の労災と同様に全額給付。休業補償は、働けなかった四日目以降に対し、基礎日額の八割に当たる計二万八千円が給付される。
 労働保険に詳しい名古屋市の社会保険労務士川嶋英明さん(36)は「フリーは体が資本。労災保険は健康保険や民間の保険より補償が手厚い」と加入を勧める。

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