<視点>繰り返す約束違反、東京電力に原発を動かす資格はない 社会部・小野沢健太

2021年11月8日 09時40分
新潟県の花角英世知事(右)に頭を下げる東京電力の小早川智明社長(左から2人目)=2021年3月25日、新潟県庁で

新潟県の花角英世知事(右)に頭を下げる東京電力の小早川智明社長(左から2人目)=2021年3月25日、新潟県庁で

 福島第一原発事故を起こした東京電力が、重大な約束違反を繰り返している。再稼働を計画する柏崎刈羽原発(新潟県)では審査時の約束を守らず、テロの脅威にさらした。福島第一原発でもずさんな廃棄物管理が相次ぎ、リスクを増大させている。正常な組織運営ができない東電に、原発を動かす資格はない。
 東電は柏崎刈羽の再稼働審査で「安全性をおろそかにして経済性を優先することはしない」と誓った。その約束を原発の管理手順を定める保安規定に明記し、原子力規制委員会は2017年12月に6、7号機の事故対策について新規制基準適合と決定した。
 しかし、柏崎刈羽では15年ごろから敷地内への不正な侵入を検知する装置の故障が多発。すぐに修理せず、複数の故障地点を一つのモニターでカメラ監視するなど不十分な対応を続けていた。
 東電は9月に公表した報告書で理由をまとめた。背景にはコスト削減があった。経営難の東電は、柏崎刈羽のテロ対策を委託していた外部企業との契約を縮小。その時期から侵入検知器の故障が多発するようになったという。
 契約変更の影響を検討した形跡もなく、第三者検証委員会が実施したアンケートでも、柏崎刈羽所員の回答者の4分の1が「経営層はテロ対策よりもコスト削減などの利益を優先している」と答えた。コスト削減を優先しないと約束した保安規定に反していることは明白で、規制委は審査を即刻やり直すのが筋だ。
 福島第一原発でも今年8月、汚染水を浄化処理する多核種除去設備(ALPS)でフィルターの損傷が発覚。2年前にも同じフィルターが損傷していたが、交換するだけで原因を調べず対策も講じなかった。東電は放置していたことを、記者会見で質問されるまで明らかにしなかった。
 収束作業で発生するがれきなどの廃棄物保管でも、今年に入ってから定められた管理をしていない廃棄物が急増していることが判明。これも、規制委からの指摘を受けるまで明らかにしなかった。
 福島第一でトラブルが続けば、被災者や周辺自治体に多大な不安を与える。そう自覚していれば、迅速に情報を発信するはずだ。不都合なことを説明しようとしない東電には、被災者の苦しみを思いやる姿勢が全く感じられない。
 東電は事業計画で「事故対応こそが原点であり、福島への責任を果たすために存続を許された」と宣言する。しかし、事故前から続くリスク軽視の企業体質は変わらず、説明にも後ろ向き。責任を感じているのかすら疑わしい。
 問題が起きても「信頼回復に努める」と釈明を繰り返すだけ。もはや言葉で、東電がいう「広く社会の皆さま」を納得させることは不可能だ。まずは柏崎刈羽の再稼働を断念し、福島事故への対処に全力を傾けることが、自らの宣言に則したあるべき姿だ。

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