心筋炎・心膜炎 胸の違和感 気を付けて コロナワクチン接種後に若い男性ら発症も

2021年11月9日 10時40分
 心臓の筋肉(心筋)や、周りを覆う膜が炎症を起こす心筋炎・心膜炎。新型コロナウイルスのワクチン接種後に発症する事例が、若い男性を中心に、国内外でごくまれに報告されている。年明けには三回目の接種が本格化する見通しだ。軽症で自然に治ってしまうケースが大半だが、症状への理解を深め、万一の際の早期発見につなげたい。 (植木創太)
 心筋炎や心膜炎の原因の大半は、風邪やインフルエンザといったウイルス感染だ。心筋や心膜に炎症が起き、発熱や悪寒、下痢といった風邪症状の数日後に、胸の痛みやだるさ、息切れ、脈の異常などが出る。横になると痛みが増し、起きて前かがみになると和らぐなど、胸痛が体位で変わるのも特徴。国の集計では二〇一九年度の患者数は、一万五千人ほどだった。
 診断を確定するには、心電図や超音波検査、血液検査、磁気共鳴画像装置(MRI)検査などで炎症の程度を評価することが必要。大抵は二〜三日で自然に治るため、受診しなかったり、受診した時には治療の必要がなかったりする場合も多い。
 しかし、重症化して心臓がうまく収縮できなくなると、全身に血液を送れず命に関わる。回復するまでは対症療法を続けるしかない。慢性化すれば難病の拡張型心筋症などにつながる場合もある。
 接種後の発症が疑われる事例は、ウイルスの遺伝情報の一部「メッセンジャーRNA(mRNA)」を注射、体内で免疫反応を起こさせるモデルナ製、ファイザー製で報告されている。製造販売業者の報告によると、百万人当たりの頻度が最も高いのはモデルナ製を打った十二〜十九歳の男性で、二八・八三人=表。若い男性に限るとモデルナ、ファイザー製とも二回目を接種した後の報告が多い。
 十月中旬、名古屋市立大医学部循環器内科学教授、瀬尾由広さん(54)が診た三十代男性は「ワクチンとの関連が疑われるケース」だ。二週間前の定期健診で心電図に異常が見つかって精密検査を実施したが、既に改善。既往症はなく、問診をすると健診を受けたのはワクチン接種の三日後だった。「心筋炎・心膜炎の症状が出ずに治った可能性は否定できない」と話す。
 ワクチンと心筋炎・心膜炎の因果関係は不明だが、日本循環器学会の新型コロナ対策特命チームの一員でもある瀬尾さんは「免疫反応によって起きている可能性がある」と話す。その分析は、ウイルスへの免疫をつける際に起きるワクチンの副反応が、若い人、一回目より二回目に出やすいという傾向とも合致する。若い女性に少ないのは、抗炎症作用のある女性ホルモンの一種、エストラジオールの影響が考えられるという。
 ただ、心筋炎・心膜炎は新型コロナに感染しても起き、その頻度は接種後より目立って高い。厚生労働省によると五月までに入院した患者のうち、心筋炎・心膜炎が疑われた人は男性二十三人、女性十人で、百万人当たりではそれぞれ千四十八人、六百七人。男女ともモデルナ製接種後の六・〇人、ファイザー製二・一人より圧倒的に多い。厚労省の専門部会が「接種のメリットはリスクを上回る」とするのは、そのためだ。一方で国は十月から、十〜二十代の男性については、モデルナ製を予約中、または一度目を既に打った場合でもファイザー製を選択できるとしている。
 十二月にも医療従事者を対象に三回目の接種が始まる。高齢者や六十五歳未満に対しても年明け以降、順次始まる見込みだ。瀬尾さんは「接種後に胸の違和感や息苦しさを感じたら、心電図が取れる医療機関を受診して」と話す。

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