<杉全美帆子 おとなのための美探訪>府中市美術館 ひたすら楽しい! 動物の絵

2021年11月9日 12時03分
 東京・府中市美術館で開催中の「動物の絵」展を見に行き、私は大変な衝撃と感動を受けて帰ってまいりました。難しいことは一切抜き、ひたすら絵を見て「かわいい、おかしい、楽しい!」とだけ感じていればいい絵のジャンルがあるなんて!
 私は長年、西洋絵画に取り組み、絵を理解するためには聖書や神話などの知識が必須、さらに暗示や象徴の意味なども総動員しなければ、その絵の真の意味はくみとれない、とそれらの勉強を重ねてきました。
 ところが最近、そんな世界観に浸りすぎて「絵って何だろう、何のために見るのだろう、画家は何のために描くのだろう?」と、根本的なことがわからなくなってもいました。
 そんなモヤモヤした気持ちを、江戸から近代にかけて描かれた、日本の面白かわいい動物たちが、見事に吹き飛ばしてくれました。
 「そ、それでいいの?」と問いたくなるおかしな形態の虎、心の声が聞こえてきそうな蛙(かえる)やとかげ、「そのかわいさは卑怯(ひきょう)だ!」と叫びたくなるまるまるころころ、ただただかわいい子犬群。そしてそれまで見てきた数々の作品の記憶や疲れを一蹴する、破壊的なまでの力を持つ徳川家光の超脱力系「みみずく」…。
 見ていて楽しい! ひたすら楽しい! 徹頭徹尾、そんなふうに思いながら展覧会場を巡ったのは初めてでした。こんな展覧会を企画してくれたのは誰だ? 一言お礼が言いたい!
 これは、コロナ禍で疲れた私たちへ、府中市美術館の学芸員さんたちからの愛だ、そんな感想を得た鑑賞となりました。 (イラストレーター)

(1)小川芋銭「芭蕉句意 居守」茨城県近代美術館(2)アルブレヒト・デューラー「アダムとエヴァ」上原美術館(3)尾形光琳「竹虎図」京都国立博物館(16日からの展示)(4)鍬形蕙斎「鳥獣略画式」(5)松本奉時「蛙図」(6)伊藤若冲「河豚と蛙の相撲図」京都国立博物館(7)桂ゆき「作品」福岡市美術館(8)マリヌス・ファン・レイメルスワーレ派「聖ヒエロニムス」ランス美術館 ©Reims, Musee des Beaux-Arts-photo Christian Devleeschauwer.(9)徳川家光「鳳凰図」徳川記念財団(10)徳川家光「木兎図」養源寺(東京都文京区)(11)上田公長「犬の子図」(12)円山応挙「雪中狗子図」(13)長沢蘆雪「菊花子犬図」 ※表記のないものは全て個人蔵

 昨年オープンした、美術館内にあるカフェ「府中乃(の)森珈琲(コーヒー)店」は、府中の森を眺めながらランチやお茶ができるとてもステキなところでした。
 お天気の良い日は、テラス席がおすすめです!

◆利用案内 

 府中市美術館の開館時間は午前10時〜午後5時。月曜休み。「開館20周年記念 動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」展は28日まで。一般1000円、高校・大学生500円、小・中学生200円。

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