<解説>医療現場の環境整備が不可欠 旧大口病院事件 決して特有ではない背景

2021年11月10日 06時00分
横浜地裁

横浜地裁

 横浜市の旧大口病院で患者3人を殺害したとして殺人罪などに問われた元看護師久保木愛弓被告に対し、横浜地裁判決は無期懲役を選んだ。自閉スペクトラム症(ASD)の特性など、被告固有の事情を考慮した判断だった。
 ただ、事件に至る背景は決して特有なものではない。
 被告が供述したように、長時間の夜勤や患者家族への対応に負担を感じる看護師は少なくない。にもかかわらず、悩みを相談できる体制やメンタルケアの重要性を伝える教育は不十分だ。長年、精神障害による労災請求件数は、職種別で上位にとどまり続けている。
 被告の逮捕に至る捜査が難航した要因でもある防犯カメラの未設置も、旧大口病院に限らない。専門家は「抑止力にもなる」と言うが、幅広い議論には結び付いていない。
 ある看護師は「多くの看護師が被告と似た悩みを抱えながらも、乗り越えている」と明かす。関東地方で病院を経営する医師は「性善説に基づいており、防犯カメラの必要性は低い」と話す。伝わってくるのは、患者の命を救っているという医療従事者の使命感や良心だ。
 しかし、その思いに依存することは、再発防止の芽を摘むことにつながらないだろうか。同様の悲劇が起きないよう、個人に任せきるのではなく、環境整備を進めるべきだ。(米田怜央)

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