<新型コロナ>改憲へ焦り、コロナ利用 首相が初言及 緊急条項、新設訴え

2020年5月4日 02時00分
 安倍晋三首相は憲法記念日の三日、改憲派のオンライン集会に寄せたビデオメッセージで、緊急事態条項の新設に向けた議論を与野党に初めて促した。国会での改憲論議が停滞する中、新型コロナウイルスの感染拡大を現状打破の糸口にしようという焦りがにじんだ。コロナ危機に便乗するような発言に、野党だけでなく与党からも現行憲法で対応可能だとする指摘が相次いだ。 (井上峻輔)
 首相は二〇一六年から去年まで、この改憲派集会に寄せたビデオメッセージで緊急事態条項を前面に打ち出したことはなかった。自民党は一八年三月に緊急事態条項の新設を含む改憲四項目をまとめているが、首相は重視してこなかった。
 自民党内ではコロナ危機後、緊急事態を巡る改憲論議を提唱する発言が続いており、首相もその動きに連なった。首相はどのような条文が新たに必要になるのかは明言しなかったが、自民党内では外出禁止をはじめ私権制限を可能にする規定の必要性を唱える意見が出ている。
 感染拡大防止策の遅れや不備の原因が現行憲法にあるかのような議論に、野党から反論の声が上がった。立憲民主党の枝野幸男代表は党ホームページ上の動画で「(現行)憲法の制約でやるべきことができないということは全くない」と説明。強い私権制限を規定する災害対策基本法のコロナ対応への適用を求めた。共産党の小池晃書記局長はNHK番組で「コロナ対応がうまくいってないのは憲法のせいではない。安倍政権の政治姿勢と能力の問題だ」と語った。与党・公明党の斉藤鉄夫幹事長も、私権制限について「現憲法下でも十分可能で、法律の話だ」と指摘した。
 首相がビデオメッセージで、その年の政治課題と結び付けて改憲を呼びかけたことは、過去にもあった。消費税増税に合わせ、幼児教育や高等教育の無償化を控えていた昨年は、四項目の一つの教育充実に触れた。毎年言及してきたのは「憲法九条への自衛隊明記」だけで、こだわりが強いのは明白だ。
 ただ、どの条項に力点を置いても、早期改憲は困難になりつつある。首相はビデオメッセージで、三年前の憲法記念日に「二〇年の新憲法施行」を掲げた経緯に触れ「残念ながら実現に至っていない」と指摘。自身の自民党総裁任期二一年九月までの改憲も青写真は描けていない。

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