ねこちゃんがいたから<新宿共助>

2021年11月10日 07時20分

路上生活中も一緒だった「ねこちゃん」を抱く佐藤さん=都内で

◆新宿共助 食品配布の会場から

 住まいのない人らに一時的な宿泊場所を提供する都内のシェルターで茶色の猫を抱く女性がいた。佐藤京子さん、五十五歳。取材で訪れた新宿区内の困窮者支援団体で出会い、話を聞いてみたくなった。都議選投開票日から二日後の七月六日、猫と一緒のインタビューに応じてもらった。
 猫との暮らしは、大型トレーラーの運転手をしていた二〇一二年に始まった。
 「雨の日、空き地の茂みから子猫の鳴き声が聞こえてきた。見ると、ぬれてびしょびしょ。母猫はいませんでした。心配になり連れて帰りました」
 もらってくれる人を探したが見つからなかった。「ねこちゃん」と呼び、自分で飼うことにした。目が離せない子猫のうちは仕事にも連れて行った。車に乗った愛らしい姿に、たくさんの人が声を掛けてくれた。
 一九年に心臓の不整脈が見つかり、医師から運転をやめるように言われた。二〇年春からホテルや工場で仕事をしたが、二一年三月には眠れないほどの腹痛が起きた。卵巣がんの疑いがあると診断された。
 「働けなくなり、治療費などのため借金がかさみました。家賃が払えなくなり五月下旬、ねこちゃんと一緒に千葉県の自宅を出た。自分の食料はなくてもキャットフードだけはかばんに詰めました」
 都庁の近くで野宿した。食品配布会場で並び、路上で物乞いもした。「苦しいときもねこちゃんがいたから頑張れました」
 一カ月ほどたち、生活困窮者の支援活動をしている人に声をかけられ、シェルターに入った。その後、都内で生活保護を申請。利用が認められ、病気の治療を始めた。ペット可の賃貸住宅も見つかり、ねこちゃんと暮らしている。
 シングルマザーだった。三十代の娘がいるという。「家庭がある娘には苦労をかけたくない。何も伝えていません。生活が安定したら連絡したいですね」(中村真暁)

おすすめ情報