<新型コロナ>緊急事態を強調、改憲狙う自民 「条項」国会関与なく私権制限

2020年5月3日 02時00分
 日本国憲法の施行から七十三年となる憲法記念日を三日、迎えた。改憲を目指す自民党は、新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が全国に出される中、「緊急事態条項」創設を風穴として改憲論議を促す動きを強めている。だが、緊急事態条項は緊急事態宣言とは全くの別物。国民の自由や権利を、国会の関与なしに制限できる点で大きく異なる。 (井上峻輔)
 緊急事態条項は、自民党が二〇一八年三月にまとめた改憲四項目の一つ。大規模災害により「国会による法律の制定を待ついとまがない」と認めた場合、法律で定めるべき事項を内閣が政令で定められる規定や、国会議員の任期を延長できる特例を盛り込んでいる。
 自民党は改憲への第一歩として、衆参両院の憲法審査会で四項目提示を目指したが、安倍晋三首相が主導する改憲を警戒する立憲民主党などの野党が応じていない。この一年間で憲法審での実質的な議論は、衆院で視察報告などを議題に四回行われただけで、参院はゼロ。今国会は両院とも憲法審が開かれていない。
 自民党にとって緊急事態条項は、憲法審を動かすための呼び水。今年二月以降、憲法審開催を野党側に求め、国会議員に感染が広がった場合の対応を議題として掲げた。首相も「緊急時に国家や国民がどのような役割を果たすかを、憲法にどう位置付けるかは極めて重く、大切な課題」と国会で訴えた。だが、野党側は「究極の火事場泥棒」(共産党の小池晃書記局長)と反発している。
 緊急事態宣言と緊急事態条項は、緊急時に一定の私権制限を可能とする点で共通しているが、決定的に違うのが国会による統制だ。
 緊急事態宣言は、発令する際は国会に報告することが特措法で義務づけられている。事前報告とは限らないが、一定の歯止めにはなる。また、都道府県知事による外出自粛要請や休業指示に強制力を持たせるなど、私権制限を強める場合は法改正が必要なため、必ず国会のチェックを受ける。
 これに対して緊急事態条項は、法律と同等の効力を持つ政令を、国会のチェックを経ずに定められるという規定。強い私権制限を含む政令でも、政府の一存で出せてしまう。そもそもどんな状況が緊急事態に当たるのか曖昧だ。
 上脇博之・神戸学院大教授(憲法学)は、緊急事態宣言と緊急事態条項について「しっかり分けて考えないといけない。(緊急事態条項が入れば)三権分立が破壊され、限りなく独裁に近い状況になる」と指摘。新型コロナ対策では「今の法律でやれることをやり、それでも不十分なら法律を変える。地に足を着けた議論をすべきだ」と話す。

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