「野党共闘の必要性は変わらず」参院選に向け、地域ごとの柔軟な戦略を 法政大の山口二郎教授に聞く

2021年11月11日 06時00分
<検証 野党共闘㊤>

野党共闘について話す法政大の山口二郎教授

 先の衆院選で、自民、公明両党の与党に対抗するため、立憲民主党や共産党などが多くの小選挙区で候補者を一本化した野党共闘。与野党が一対一で対決する構図に持ち込むことで、立民が小選挙区で議席を増やし、一定の成果を得たが、比例代表は伸び悩んだ。
 立民の枝野幸男代表が衆院選敗北の責任を取って12日に辞任する意向を表明する中、来夏の参院選に向けて野党の連携はどうあるべきか、本紙は3人の識者らにインタビューした。
 初回の山口二郎法政大教授は、共闘の方向性については間違っていないと指摘。その上で、ジェンダー平等など自民党とは違った政策を明確に掲げ、地域のそれぞれの実情に合わせた非自民勢力の連携を模索していくべきだと訴える。
 インタビュー企画では、リベラルから穏健保守まで幅広い国民の支持をどう得るかや、若者の関心を得るために何が必要かなども掘り下げる。
 ―衆院選の選挙結果をどう見るか。
 「小選挙区に限れば、立憲民主党は公示前に比べて議席を増やし、野党共闘の効果はあった。敗れはしたものの、僅差の小選挙区も多かった。浮き沈みは常にあり、結果自体は嘆くほどではない。ただ、議席増への期待が大きかっただけに落胆の度合いが大きい」
 ―敗因は。
 「2極対立の構図をつくりきれなかった。東京都を中心に大都市圏で日本維新の会が候補者を立て、自民党か野党共闘の候補かという2択ではなくなった。維新が非自民の票を集めて議席を増やした。維新は大阪という絶対的な拠点を持っており、当面、3極の構造が続くだろう」
 ―自民は首相交代が奏功した。
 「菅義偉前首相が辞任して、安倍晋三元首相から続いた政治の記憶が消去されてしまった。自民は9年近く権力を握っていたにもかかわらず、その功罪への議論はないままで、岸田文雄首相に代えて、過去の失敗を隠す効果はあった」
 ―野党側も攻めきれなかった。
 「立民にも問題はあった。共産党と選挙に臨むことは既定路線で、批判があってもはね返す確信と攻める姿勢を出した方が良かったが、ぎりぎりまで態度を保留した。4年前の果敢な姿勢と違っていた。会員制交流サイト(SNS)で『枝野立て』というブームが起きた2017年衆院選と異なり、枝野幸男代表に戦うリーダーというイメージがなかった」
 ―共産と対立する支援組織の連合への配慮では。
 「連合の支援も必要だし、共産にも候補者を降ろしてもらわないといけないということでバランスを取ったと思う。ただ、枝野代表は言い訳が多く、一般の有権者に対する訴求力は出なかった」
 ―野党共闘で立民は比例代表で議席を減らした。
 「共産と組んだからではなく、立民や枝野代表のイメージが低下したことが大きな原因だと思う。4年前の衆院選で立民に入れた人たちのかなりの部分が、議席を増やしたれいわ新選組に流れた可能性がある。れいわは19年の参院選の比例票とほぼ同じ200万票余りを獲得しており、固定の支持層がいると受け止めている」
 ―政権交代にはリベラル勢力に加え、中間層の取り込みも欠かせない。
 「連合の神津里季生前会長の時には、連合と市民連合の間に暗黙の役割分担があった。市民連合がリベラル勢力をまとめ、連合が立民と国民民主党をつなげる。全体として、非自民の広い範囲の野党の力を結集するという事実上の合意があった。しかし、10月に連合の会長が替わり、共産との連携に反対する印象が強まった」
 ―来夏の参院選では改選1人区の勝敗が鍵を握る。
 「維新が台頭し、国民民主も反共路線を明確にしている。候補者の一本化を妨げる要因は増えたが、自民に対抗するには、政党ブロックをつくるしかない。野党が共闘する必要性は変わっていない」
 ―今回の選挙の教訓は。
 「政党や支援組織などが中央レベルで合意して、野党候補の一本化さえできれば、二者択一で投票してくれると思い込んだ部分はあった。しかし、地域ごとに政治的な事情は違う。(野党共闘を後押しする)市民連合がエネルギーを持っている地域もあれば、連合の地方組織の助けを借りないと戦えない地域もある。柔軟に戦略を考えるしかない。今回、厳しい選挙戦を勝ち抜いた小選挙区の野党候補は、日ごろからそれぞれと信頼関係を築いていた。立民はそうした経験を党全体で共有すべきだ」
 ―立民は年内に新体制が発足する。
 「目指してきた方向性は間違っていない。野党の共通政策も変える必要はない。大敗というメディアの批評に動揺する信念のなさこそが問題だ。旗印は、自民が無関心なジェンダーの平等や貧困の解消でもいい。政権交代によって目指す社会像を鮮明に打ち出してほしい」
 ―立民の代表選で共闘の是非も争点になりそうだ。
 「率直な議論が必要だが、今回、小選挙区で勝った政治家は共闘を否定できるはずはない」
 ―共産への期待や注文はあるか。
 「政策的には以前に比べて中道に寄ってきているが、かつての左翼的な政党というイメージがぬぐえていないという印象だ。党名を変えるかどうかを含め、どうするかは共産自身が考えるべきことだ」
 ―市民連合の野党共闘へのかかわり方は変わるか。
 「政治的な環境が変わっており、1回区切りを付けた方がいい。関わっている世代も高齢化しており、取り組むべき課題も議論を通して再設定すべきだ。名前を変え、担い手の世代や性別も広げていく必要がある」
 ―維新との連携は。

 「政策などが違いすぎて、およそ協力できる相手ではない。維新への支持も持続するか分からない。国民民主も当面は見守るしかない。今すぐ何かしようと考えず、ある程度考えが近い立民、共産、れいわ、社民でブロックをつくることが基本だろう」(聞き手・我那覇圭)

 やまぐち・じろう 1958年生まれ。東大法学部卒。北海道大教授を経て、2014年から法政大教授。10月の衆院選では、野党共闘を後押しする「市民連合」の運営委員として、立憲民主党や共産党などが合意した共通政策の立案に携わり、野党の連携を仲介した。著書に「民主主義は終わるのか―瀬戸際に立つ日本」など。

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