<日本の岐路 4月をつづる>正常性バイアス問答 編集局次長・金井辰樹

2020年4月30日 02時00分
 「政府は正常性バイアスに陥っているのではないか」
 二十八日の衆院予算委員会。立憲民主党の枝野幸男代表が安倍晋三首相に「正常性バイアス」問答を仕掛けた。
 正常性バイアスとは、都合の悪い情報を無視したり過小評価したりすること。二〇一一年に起きた東日本大震災とその後の原発事故の時、菅政権の官房長官として対応にあたった枝野氏は「常に最悪を想定していたつもりでも、現実は想定していた最悪よりもさらに急激に悪化した。じくじたる思いがある」と語り、今は安倍政権が正常性バイアスに陥っているのではないかと迫ったのだった。
 そして枝野氏は、補正予算案に盛り込まれている「Go To キャンペーン」をやり玉にあげた。新型コロナウイルスの終息後に観光業や外食産業を支援するのはいいが、今は現下の危機に対応するのが先ではないか。真実から目を背けた「正常性バイアス」に陥っている証拠だと枝野氏は考えている。
 安倍氏は「われわれは決して正常性バイアスに陥っていない」と否定。「収束後に反転攻勢できるという未来像を示すことも政治の役割だ」と反論した。今に専念すべきか、その後も見通すか。優先順位を巡る論争でもある。
 「Go To キャンペーン」といい全世帯に布マスクを配る「アベノマスク」といい、安倍政権の対応は「今やることか」と突っ込みを入れたくなるものが少なくない。各種世論調査でも内閣支持率は低迷。多くの国民は安倍政権に不満を抱く。
 この問題は、政府だけでなく野党も含めた国会にも当てはまる。論戦を聞いていると、東日本大震災、リーマン・ショック、世界大恐慌を上回る危機だというセリフは次々と出るが、実際出てくる発想や行動は、平時から抜け出せない印象だ。
 平時から抜け出せないといえば、イベントや会合が軒並み中止や延期になる中、毎週各地で選挙が行われていることに違和感を持つ人も多いのではないか。
 選挙が民主主義の根幹であるのは言うまでもない。「密」を避けながら多くの方々が貴重な一票を投じていることには敬意を表したい。しかし、各選挙の投票率は「過去最低」が並ぶ。候補者も政見を訴える機会が極端に少ない。現職が選挙に出る場合は、コロナ対応に専念できない心配がある。今はコロナ対応が優先だとして延期論が出るのは当然だろう。
 地方選日程の変更は、法整備が必要だが、最近では東日本大震災後、被災地域の地方選が延期になった。今回は公明党が延期に積極的で、野党からも同調の声が出ている。
 五月は、緊急事態宣言の期間延長の是非の判断をにらみながら、並行して選挙延期の議論が本格化するだろう。
 東京都知事選は七月五日にセットされている。同月の二十四日から開幕する予定だった五輪は既に延期が決まった。五輪前に行われることになっていた知事選はどうなるのか。選挙日程は、とかく党利党略がからむが、ここは党派を超え、正常性バイアスに陥らずに結論を出してもらいたい。

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