「憲法は負けて勝ち取ったもの」「優しい人は想像力がある人」瀬戸内寂聴さん 慈愛に満ちた言葉の数々

2021年11月12日 06時00分

新刊「いのち」について記者会見する瀬戸内寂聴さん=2019年4月8日

 99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんは、晩年も平和を願い、東日本大震災の被災者に思いを寄せ、声を発し続けた。作家として、僧侶として、その言葉は想像力と慈愛に満ちていた。
◆2015年8月15日付本紙インタビュー「手のひらからの平和論」
 「大本営発表だけを聞かされていたから。負けてるのにちょうちん行列していた。そんなおばかちゃんでしたね、私も国民も。戦後、焼け跡の残る東京を見て、これからは自分の手で触って、手のひらに感じたものだけを信じて生きようと思いました。それが私の革命です」
 「新しい憲法は敗戦後、米国に押しつけられたと言うけれど、負けて勝ち取ったものですよ。すごい犠牲の上にできた憲法なんだから。もしも、日本が九条を守らないようなことがあれば、世界を欺き、うそをついたことになる。戦争しません、しませんって言ってきたのだから。みっともないことだと思う」
 「政府は民を幸せにしなきゃいけない。そのためには民意を、民の心を聞かなきゃいけないでしょ。聞くことが政治家なのに、現在の政治家、安倍さんたちはまったく聞かないでしょ。(米軍新基地建設中の沖縄県名護市)辺野古だって日本なのよ。それなのに、日本じゃないみたいな扱いをしている」
 「若い人たちの前で、『青春は恋と革命』と言ったら、みんな『わーっ』と盛り上がりましたよ。若い人もうれしいらしい。それだけでいい。革命は死ぬまでできる。自分の革命をしていけばいい。戦争を知っている世代は伝えていかなくてはならないわね。ぼけてるひまなんかないのよ」
◆2015年6月18日、安全保障関連法案への抗議が続く国会前でのスピーチ
「いい戦争は絶対にありません。戦争はすべて人殺しです。殺さなければ殺されます。そんなことは人間の一番悪いことです。二度と起こしちゃならない」
 「最近の日本の状況を見ておりますと、なんだか怖い戦争にどんどん近づいていくような気がいたします。その気持ちを他の人たちにも伝えて、特に若い人たちに伝えて、若い人の将来が幸せになるような方向に進んでほしいと思います」
◆2012年11月25日付、小説『月の輪草子』刊行の際のインタビューで
 「生ぜしもひとりなり。死するも独りなり」という一遍の言葉がある。お釈迦しゃか様も『さいの角のようにただ独り歩め』と言っている。結局、人間はひとり。孤独なんです。たとえ愛し合っていても」
◆2012年8月8日付本紙、佐藤愛子氏との対談「この夏に思う」
 「(原発再稼働反対の)座り込みに参加した時、私は、再稼働は『あるかもしれない』と思った。でも、なぜ座り込んだかというと、『反対した人間がいた』ということを歴史に残しておかなきゃいけないから。そして、声に出して行動に表さないといけない。たくさんの人が行動し、人々の同じ『念』の力が大きくなれば、ものは動くかもしれない」
 「反原発デモを見ていて思ったのは、安保のデモは思想を持った人、インテリがやっていたけれど、今度はそこらのおばさん、お姉ちゃんが危機を感じて赤ちゃんを連れて参加しているということ。観念的じゃなく実質的なんです。その切実な声を政府は聞いていない」
◆2012年5月2日、東京・霞が関の経済産業省前で、脱原発を訴えるハンストに参加して

反原発を訴え、経産省前で座り込みに参加する作家の瀬戸内寂聴さん。左はジャーナリストの鎌田慧さん、右は作家の沢地久枝さん=2012年5月2日

 「これまで生きてきて、福島の原発事故のような恐ろしいことは戦争以外に一度もなかった。政府は再稼働をどうして焦るのか。原発事故は人災であり、同じことを繰り返しては子どもや若い人がかわいそうです」
◆2011年4月14日付本紙「3・11から」インタビューで
 「被災地の人の健康を祈るみんなの思いやりの『念』が塊になったら、力になります」
 「どん底にいても、人は必ず立ち上がります。仏教でいう『無常』。同じ状況は続かないのです。だから被災者の方も絶望しないでほしい」
 「東北の人は辛抱に慣れている。辛抱は『忍辱にんにく』といい、仏教の一つのぎょうですが、今は辛抱せずに『耐えられない』『早くこうしてほしい』と声を発してください。自分のためだけではなく、子どものためにも、もっとわがままになってほしい」
 「逆に、被災者でない人は忍辱を心掛けて節約し、仏教の基本的な思想の『忘己もうこ利他りた』の心を思い出してほしい。『もう懲りた』ではないですよ。自分の利益を忘れ、人の幸福のために尽くすことです」
◆2011年2月12日付、電子書籍『ふしだら』刊行に際したインタビューで
 「恋愛なんてものは不可抗力。ある日突然、雷のように落ちてくる。その人を好きになってはいけないと思っていても、好きになっちゃうでしょ。理屈じゃないものと闘っていかなければいけないから、人生は大変なんですよ」
 「人間は本来はみんな、煩悩(欲望)の塊。今、人に非難されるようなことをしてない人でも、いつそうなるかわからない。そして自分にも煩悩があると思えば人を責められないし、煩悩ゆえに痛い目に遭った人は、人の痛みもわかる。人に優しくなれますよね」
 「生きるってことは結局、出会いでしょ。人でも、物でも、書物でも、音楽でも、それと出会うってことが生きること。出会うってことは、縁で結ばれること。たくさんの出会いを経験した人の方が、人生豊かですよね。そして出会うってことは、必ずいつか別れるっていうこと。だから、今ある縁を大事にしないと。感謝しないとね」
 「縁は、切れないもの。切ったつもりでも、どこかでくっついている。それとやっぱり、自分も気づかないうちに人を傷つけ、それでも許されて生きているのよね。縁あって近くにいる人々と何かあったときには、責める一方じゃなくて、自分も許されてるんだから人も許しましょう、と思ってほしいですね」
◆2008年6月19日付、死刑についての特報面インタビューで
 「死刑も殺人にほかならず、殺人の連鎖でもある。それより(殺人事件が)なぜ起きたかを考えないと」

イラクへ医薬品を届けたい、と卒業生に囲まれ笑顔で語る学長時代の瀬戸内寂聴さん(中央)=1991年3月23日、敦賀市の敦賀女子短大で

 「皆さん、被害者の側に身を置いて考えるんですね。自分は加害者にならないと思っている。人間って非常に危うい存在。絶対に自分が加害者にならない保証はない」
 「優しい人っていうのは、想像力がある人。他者の苦しみが想像できる人。相手の気持ちを想像できなければ、優しくできない。だから、優しい人にするためにまず想像力を養うべきです。それには本を読ませなさい」
◆2017年12月、最後の長編小説『いのち』刊行に際して
 「生れ変っても、私は小説家でありたい。それも女の」

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