中国と国際社会は「パラレルワールド」 習近平氏、歴史解釈ねじ曲げ、権威引き上げ  

2021年11月12日 06時00分
 中国共産党の新たな歴史決議は、習近平しゅうきんぺい総書記(国家主席)の功績を称賛し、建国の父、毛沢東もうたくとうと並ぶ存在と位置づけた。習氏は長期政権実現に向けて、自らの権威を強引に引き上げた。日本を含む国際社会は、権力者が恣意しい的に歴史解釈に介入する強権国家といかに向き合うかという難題を抱え込んだ。(北京・中沢穣)

中国共産党の6中全会に臨む習近平党総書記(国家主席、中央)。中国中央テレビが11日放映した=共同

◆自賛
 「長い間、解決できなかった多くの難題を解決し、歴史的な成功を収め、歴史的な変革をもたらした」
 歴史決議を採択した6中全会の閉幕後に発表されたコミュニケ(声明)は、習氏の功績を自ら称賛。新型コロナウイルスの対応も「防疫と経済社会の発展を両立させた」などと評価したほか、反腐敗や環境対策など13分野における功績を列挙した。
 一方でコミュニケは、文化大革命や天安門事件など共産党の負の歴史にはほとんど触れていない。鄧小平とうしょうへい氏が主導した1981年の歴史決議は中国を大混乱に陥れた文化大革命への反省が基調となっていたが、今回の決議は、党の「輝かしい歩み」と習氏個人への称賛一色となった。
◆強引
 コミュニケは党の100年について(1)毛が実現した建国と社会主義建設(2)鄧氏が始め、江沢民こうたくみん氏、胡錦濤こきんとう氏が継承した改革開放(3)習氏の新時代―という3段階に区分した。毛と習氏を同列に扱うと同時に、鄧氏を改革開放を率いた3人のうちの1人に相対化したのがミソだ。
 しかし毛の建国、鄧氏の改革開放に比べ、習氏の功績は小粒で「同列に論じられない」(中国人記者)。また来秋の党大会以降も最高指導者にとどまれば、個人への権力集中を戒めた鄧氏の路線と矛盾する。そこで決議では自らの権威を高めると同時に、鄧氏の権威を引きずりおろす必要があったが、歴史解釈への強引な介入という印象を免れない。
◆平行
 民主化運動が起きた香港についても「『乱』から『治』の重大な転換を推し進めた」、台湾についても「台湾独立の道や外部勢力の干渉に断固として反対」などと強調。こうした考え方は、人権侵害などを懸念する欧米や日本など自由主義国家の認識とはギャップがある。
 時の権力者が権力維持のために歴史解釈に手を突っ込むこと自体が、日本や欧米の感覚とは相いれない。岸田内閣は香港や新疆ウイグル自治区の人権問題への懸念を念頭に、国際人権問題担当の首相補佐官に中谷元・元防衛相をあてた。
 中国メディア関係者は、全く異なる歴史観を持つ中国と国際社会を「平行世界(パラレルワールド)」と表現し、「これから2つの世界の距離は、ますます広がる」と憂慮する。

関連キーワード


おすすめ情報

国際の新着

記事一覧