振り込め詐欺、捜査線上に浮かぶ「手出しできない業者」 警察摘発を本格化

2021年11月13日 06時00分
 携帯から電話しても相手に固定電話番号が表示できる転送サービスを悪用したニセ電話詐欺が相次ぐ中、全国で昨年末までの1年4カ月間に、この手口の詐欺で使われた約4300個の番号のうち9割以上が、都内の番号再販業者5社から転売されていたことが、警察庁への取材で分かった。同庁は5社が転売した番号による被害が、この数年で数百億円とみている。警察は2社の経営者らを摘発。“詐欺番号”の大本を絶つ捜査を本格化させている。(井上真典)

◆都内の再販業者5社に集中

 再販業者はNTTやKDDIなど大手電話会社から「03」「06」などで始まる固定電話番号を購入し、企業などに売る。顧客は転送サービスを使うと、携帯電話からかけても相手には「03」「06」などの番号が通知される。
 詐欺グループはこのサービスを悪用。役所や警察が固定電話からかけているように装い、言葉巧みにだます。
 警察庁は大手電話会社に対し、詐欺に使われた固定電話番号の一時利用停止を要請している。2019年9月~20年末に電話会社が停止した4300個の番号の出元を調べたところ、都内の再販業者5社に集中していた。
 番号は再販業者から転売を繰り返して詐欺グループに渡るため、業者と詐欺グループの接点は分からず、捜査線上にたびたび浮かびながら「手出しできない業者」と呼ぶ捜査員もいた。

◆転売番号の被害、1社で80億円超

 警察庁は今年4月、「悪質な事業者に対し、あらゆる法令を駆使して取り締まりを推進すること」と全国の警察に通達。番号の転売元を含めた犯行ツール提供業者の取り締まりの強化に乗り出している。
 愛知県警は6月、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)の疑いで、5社に含まれる「BIS」(東京都新宿区)の実質的経営者の男(42)らを逮捕した。逮捕容疑は、NTTドコモとの携帯電話契約に違反した使い方で支払料金を逃れるなどしていたとされる。
 福岡県警も9月、5社の1つ「ボイスオーバー」(同)の経営者の男(38)ら2人を同法違反(犯罪収益等隠匿)の疑いで逮捕した。
 県警によると、同社が転売した番号によるニセ電話詐欺被害は、13年からの8年間で80億円に上るとみられる。県警幹部は「詐欺グループとの接点を解明したい」と話す。

◆「疑わしい業者と分かっていたが」

 今回、東京都内の番号再販業者5社のうち2社の経営者が摘発され、詐欺グループへの番号供給は一部遮断されたとみられる。ただ、看板を書き換えて対策逃れを図った業者もあり、警察は動向を警戒している。
 固定電話番号の転送サービスを悪用した手口の詐欺被害は数年前から顕著となった。警察の捜査の中で、詐欺に使われた番号が再販業者5社から転売を経て詐欺グループに流れる図式は明らかになっていたが、簡単には止められなかった。
 大本の再販業者は、大手電話会社から大量の番号を購入し、転売している。電気通信事業法は、災害などの「正当な理由」がなければ通信サービスの提供を拒めないと規定している。この原則を踏まえ、ある大手電話会社の関係者は「疑わしい業者と分かっていたが売らざるを得なかった」と打ち明ける。

◆資本力のある5社

 警察庁は2019年から、詐欺で使われた番号の一時停止と、番号を提供した悪質業者に一定期間、新たな番号を売却しないようにする対策を大手電話会社に要請した。
 小規模業者がつぶれるなど一定の効果はあったが、捜査関係者は「資本力のある5社が逆に目立ちだした」と明かす。
 一時停止された番号は時間をおけば再び使えるため、多数の番号を所有する5社の一つは取材に「番号を寝かせている」と話した。また、新たな会社を立ち上げ、番号を大量に購入した業者もあるなど、いたちごっこが続いてきた。
 警察庁幹部は「あらゆる法令を駆使し、今後も詐欺のツールの取り締まりを続けていく」と強調した。

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