【解説】盤上の「正解」読み切る藤井四冠 AI時代の申し子、一般人にも伝わる異能 

2021年11月14日 06時00分
 最高峰のタイトル竜王を獲得した藤井聡太四冠が、名実ともに棋界の頂点に立った。過去の四冠保持者は、いずれも一時代を築いた棋士ばかり。ついに「藤井時代」が到来したといえる。
 それは「盤上に厳然とした『正解』が存在する時代だ」と、長年将棋界を取材してきた観戦記者の小暮克洋さんは指摘する。1996年に羽生善治九段が前人未到の全七冠(当時)を制覇した時、そのすごさを理解できるのは、ある程度の棋力を持つ人だけだった。
 しかし現代のタイトル戦はネットで中継され、画面には人工知能(AI)の読み筋が示される。藤井四冠が指すたび「また最善手」と称賛の書き込みが並ぶ。誰よりも「正解」を選び続ける藤井四冠の異能は、将棋を知らない人にも伝わる。「AIという神に一番近づいている人間として、神通力を与えられている」と小暮さんは評する。

第34期竜王戦7番勝負第4局で豊島将之竜王に勝利し目をつぶる、史上最年少の19歳3カ月で四冠を達成した藤井聡太新竜王=13日夜、山口県宇部市(代表撮影)

 もともと藤井四冠は小学6年の時、詰め将棋を解く大会でプロより高い成績を収め優勝するなど、類いまれな才能を持っていた。「かつてならそれに加え、長い年月をかけた経験が重要とされた。しかし今は、経験をAIの助力でカバーできるようになった」。急激な進化の背景を小暮さんはそう解説する。
 AIにより素養を開花させ、AIにより一般人もそのすごさを理解できる。藤井四冠は、二重の意味でAI時代の申し子といえる。加えてその成長は、目に見えるほどの速度で進行中でもある。神ならぬ人間がどこまでの境地に達することができるのか。片時も目が離せない。(樋口薫)

おすすめ情報

囲碁将棋の新着

記事一覧