面会制限、介護の壁に 施設や病院 認知症進む恐れ

2020年4月19日 02時00分
 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、認知症の当事者やその家族に不安が広がっている。介護施設や病院では、感染防止のため面会が制限され、長期間家族と会えなくなるケースも。家庭での介護もストレスをためやすくなることが懸念され、現場は対応に苦慮している。
 ▼忘れてしまう
 「このままだと夫は私のことを完全に忘れてしまう」-。兵庫県加古川市の羽田洋子さん(76)は、特別養護老人ホームに入所する認知症の夫と面会できなくなって一カ月以上が過ぎた。以前は、一日おきに見舞いに行き、夕食の介助や就寝前の着替えなど準備を手伝っていた。今は週に一度、施設職員から電話で夫の様子を知らされるだけだ。「忙しい中、連絡をくれる職員には感謝しかないが、早く状況が改善してほしい」と祈る日々だ。
 病院で家族の面会が禁止された後に、認知症の入院患者が危篤になった例も。「認知症の人と家族の会」富山県支部によると、七十代の女性が二月に大腿(だいたい)骨骨折で入院。手術後から面会禁止が続いていたが、三月、突然病院から夫に「危篤になった」と連絡が入った。コロナとは別の感染症で、その後回復した。同支部は「自分で意思を表せず、家族でなければ気づけない変化が見落とされた」として、一律面会禁止ではなく、個別事情への配慮を求めている。
 同会には「面会できない間に母が服薬を拒み、食事も食べなくなり、やせてしまった」などと電話相談が相次ぐ。
 ▼常識通用せず
 施設は当事者のケアに頭を悩ませる。大阪市内の認知症デイケア施設で働く女性職員は「感染防止対策の常識は全く通用しない」とため息をつく。利用者は要介護度が高い重症者が多い。装着した自分のマスクを食べようとしたり、アルコール消毒した手をなめたりしてしまう。「隣の人と距離を取ってほしいという指示を理解できる人は少ない」状況だ。
 利用者への感染防止対策が難しい中、いつ感染者が出るか不安が募る。「家族から、サービスを続けてほしいという要望は根強い。板挟みだ」とつぶやく。
 ▼虐待の懸念
 在宅介護も難しい面が出ている。認知症介護研究・研修仙台センターの矢吹知之研修部長によると、感染を恐れデイサービスの利用を控えた結果、家族と本人が互いにストレスを感じて虐待に近くなるケースが出ているという。国際アルツハイマー病協会(本部・ロンドン)は家族ら介護者に対し「脅かすように手洗いを強要し、無理やり人との距離を取らせるようなことは避けよう」などとメッセージを出した。
 矢吹氏は「認知症の人は活動が減って生活リズムが崩れると、睡眠障害や夜間のせん妄が出ることもある」と指摘。「社会的な交流がなくなると症状が進行する人もいる。家族ら介護者の支援も大切だ」としている。

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