10万円給付の舞台裏 ぶれる首相…公明党に押し切られ 30万円案への世論の批判も影響

2020年4月17日 10時38分
 安倍晋三首相が十六日、新型コロナウイルス対策として、国民一人当たり十万円を一律給付するために二〇二〇年度補正予算案の組み替えを指示したのは、減収世帯に限って現金三十万円を給付するとした現行案が世論の批判にさらされたからだ。休業要請や外出自粛に苦しむ国民への生活支援が不十分との声が日増しに強まる中、連立与党の公明党が一人十万円の一律給付を迫り、首相は押し切られた。 (中根政人、坂田奈央)

◆山口公明代表が直談判

緊急事態宣言の発令後、記者会見する安倍首相

首相と会談後、取材に応じる公明党の山口代表=15日、首相官邸で

 「今日、この前に首相と電話でやりとりをした。改めて公明党の考え方を伝えた」。公明党の山口那津男代表は十六日午前の党中央幹事会で、こう明らかにした。前日には官邸に首相を訪ね、十万円の一律給付を直談判したばかりだった。
 公明党は並行して同日予定されていた衆院予算委員会の理事懇談会を欠席する方針を伝えた。理事懇では七日に閣議決定された補正予算案の審議日程を議論するはずだったが、与党の公明党が現状の補正予算案の審議には応じられないと通告したことになる。
 公明党の強硬姿勢に首相も譲歩せざるを得なくなった。山口氏に電話で「引き取って検討する」と回答。その後、麻生太郎財務相、自民党の二階俊博幹事長、岸田文雄政調会長を相次いで官邸に呼び、補正予算案の組み替えを指示した。

◆異例の予算案組み替え要求

 閣議決定した予算案の組み替えを与党が求めるのは異例中の異例だ。それほど三十万円給付案は評判が悪かった。給付まで時間がかかる上に、対象世帯が限られ、基準も分かりにくい。世帯主の月収を判断基準としたことに「共働き家庭などの実情に合っていない」との批判も相次いだ。
 公明党は当初から一人当たり十万円の給付を提言していた経緯もあり、こうした世論に「政権が危ない」(幹部)と懸念を強めた。二階氏が十四日、一人十万円を給付する二次補正予算案構想を打ち上げたことも公明党の背中を押した。
 自民党幹部が一次補正の審議前に二次補正に言及するのも極めて異例だ。一次補正が不十分だと認めるに等しいからだ。二階氏は三十万円給付案が首相と岸田氏の三日の会談で決まったことに「政府が勝手に決めた」と不満を募らせていたとの見方も与党内にある。

◆「首相は全然違うこと言い出した」党内に危機感

 閣議決定後の予算案修正は、近年では毎月勤労統計の不正調査の影響を受けた一九年度当初予算案の例があるが、数は少ない。今回のような政策変更による組み替えとなれば「何か理由がなければできない」(自民党幹部)荒技だ。政府は十六日夜、緊急事態宣言の対象地域を全四十七都道府県に急きょ拡大。状況の激変を組み替えの大義名分に位置づける方針だ。
 ただ、感染者が少ない県が政府対応に反発する可能性がある。もともと十万円の一律給付を唱えていた野党各党も政権批判を強める構えだ。自民党内からは「首相は今までと全然違うことを言い出した。ぶれが激しい」(若手)と政権運営を危ぶむ声も出た。

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