国宝5城で世界文化遺産登録へ 松本、犬山、松江市が「連携」も…「単独」の姫路、彦根市とは温度差

2021年11月16日 12時00分
 国宝の5城全体で「近世城郭の天守群」として世界文化遺産に登録したいと、松本城(長野県松本市)、犬山城(愛知県犬山市)、松江城(松江市)の地元3市が連携を強めている。5城のうち姫路城(兵庫県姫路市)は既に世界文化遺産に登録され、彦根城(滋賀県彦根市)も前段の暫定リストに入っている。3市は機運を高める活動を続けるが、2市とは温度差もあって—。(竹内なぎ、水越直哉、渡辺雄紀)
 3市は16、17日、松江市で市民の交流行事を開く。世界遺産の登録に向け「啓発の方向性を話し合いたい」と松本市の担当者。同市は来年、「松本城の日」を制定して機運を盛り上げようと、10日まで日付や理由を公募した。

松本城=長野県松本市で

 松本市はかつて単独登録を目指したが、暫定リスト入りできなかった。その際、文化庁から同種資産との組み合わせなどを研究するよう求められた。このため2008年から犬山、彦根両市との共同研究に方針転換。彦根市は市長の交代を機に離脱したため、16年から犬山、松江両市と取り組んできた。

愛知県犬山市が世界文化遺産への登録を目指している国宝犬山城=愛知県犬山市で

 政府の文化審議会は今年3月、従来の暫定リストを見直すよう文部科学相に答申した。このリストの中から、政府は国連教育科学文化機関(ユネスコ)に登録を推薦するため、松本市の臥雲がうん義尚市長は「千載一遇のチャンス」と3市での活動を活発化。

松江城=松江市で

 6月には3市長が文科省の副大臣とオンラインで意見交換した。7月も松江市の観光関連シンポジウムに松本、犬山両市長がリモートで登壇するなど、アピールを続けている。犬山市の山田拓郎市長は「複数の城で捉えた方が価値を発信できる」と意義を強調する。

世界遺産登録されている姫路城=兵庫県姫路市で

 だが、ハードルは高い。1993年に姫路城が登録された姫路市は「(1城で)普遍的価値を認められた。(5城での)拡張登録は考えていない」と冷淡。92年に彦根城が暫定リストに入った彦根市の和田裕行市長も「単独で(登録を)取りにいきたい」と会見で明言している。

彦根市が単独での世界遺産登録を目指している彦根城の天守=滋賀県彦根市で

 暫定リストの見直しは来年3月まで、手順を定める作業が続く予定。その後、政府の文化審議会が対象を絞って自治体に資料提出を求めたり、現地調査したりするとみられる。新たなリスト入りは、熊本県の「阿蘇カルデラ」や、四国4県の「四国遍路」なども狙っている。
 世界遺産に詳しい国学院大の西村幸夫教授(都市計画)は「木造の天守群は世界史でも珍しく、ストーリーとしては有力」とした上で「5城で必要十分なのかという国宝にとらわれない深い議論が必要。複数での登録に向けては文化庁がイニシアチブを取る必要も出てくる」と指摘する。

 国宝5城 江戸時代までに建てられ、天守が現存する12城のうち、文化財保護法に基づいて国宝に指定された姫路城、彦根城、松本城、犬山城、松江城。他の7城は国指定重要文化財。同法では重要文化財のうち世界文化の見地から価値が高く、類いないものを文部科学相が国宝に指定できると定めている。

 世界遺産への登録 政府の文化審議会が暫定リストから候補を選び、ユネスコに登録の推薦書を提出。毎年、ユネスコの世界遺産委員会で決定する。文化遺産と自然遺産があり、今年7月には国内で「北海道・北東北の縄文遺跡群」(文化)と「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(自然)が登録された。国内からは文化20件、自然5件が登録されている。暫定リストには現在、彦根城など文化5件を記載している。

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