路上生活者らへのコロナワクチン集団接種、都内各区で始まる 3回目接種始まる今やっと

2021年11月17日 06時00分
新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける路上生活中の男性=東京都豊島区で

新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける路上生活中の男性=東京都豊島区で

 住まいがなく、新型コロナウイルスのワクチン接種券が届かない人たち向けの集団接種が東京23区で進む。これまで住民票がないことなどから接種を受けられなかった人からは感謝の声が上がる。だが、接種を受けていない路上生活者らはまだ多いとみられる。3回目の追加接種が始まる年の瀬に向け、専門家からは国や自治体にさらなる対応を求める声が上がる。(中村真暁)

◆券がなくても接種可能…3割は知らず

 10月末、路上やネットカフェで暮らす72人が豊島区の東池袋中央公園に集まった。国内外で生活困窮者らの医療支援を展開する認定NPO法人「世界の医療団」(港区)などの案内で近くの区池袋保健所へ移動し、接種を受けた。
 予約は、同じ公園で行っている困窮者向けの無料の食品配布会などで受け付けた。本人確認の書類を持っていなくても、名前と生年月日を申告すればいい。路上生活を送る男性(58)は「これまで『接種したい』と言える立場ではないと思っていた。ありがたい」とほっとした様子だった。
 接種券は住民票の住所に届けられる。住まいがなくても接種が受けられるよう、国は4月に自治体に通達を出し、住民票がなくても窓口に来た人には接種券を発行することを求めた。
 しかし、「世界の医療団」が5月に池袋の無料食品配布会場でワクチン接種券について聞いたところ、接種を希望する182人のうち3割に当たる52人が「受け取れない」と回答。「分からない」も2人おり、接種券を巡る仕組みの周知が行き届いていない状況が浮かんだ。

◆情報格差の是正は今後の課題

 こうした結果を踏まえ、豊島区は「世界の医療団」と協力し、住まいのない人向けの集団接種を行うことを決めた。取り組みを分かりやすく説明するちらしは食品配布会やネットカフェで配った。
 同区の沢田健司・新型コロナワクチン接種担当課長は「周知するにはこちらから出向いての踏み込んだ対応が必要だと思った」と説明。「世界の医療団」の武石晶子さんは「接種するかどうかを選ぶ権利すら奪われた人たちがいる現状を行政にも伝えられた」と話した。2回目接種は今月末に予定している。
 23区では渋谷区が8月から14人に、台東区が9月から85人にそれぞれ2回の集団接種を実施。新宿区も今月2日、80人に1回目接種をした。
 ただ、1月の都調査では都内の路上生活者は862人に上り、2018年公表の都調査ではネットカフェ難民は1日当たり推計約4000人に及ぶ。これに対し4区の集団接種人数は計約250人にとどまる。
 路上生活者支援に取り組む東洋大の木村正人教授(社会学専門)は「多くの人が2回目接種を終えた一方で、1回も受けられないまま置き去りになっている人がいる。中でも住まいのない人には正しい情報が伝わりにくく、国や自治体は民間団体などと連携し情報格差を是正する必要がある」と指摘する。

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