<ゴッホ展 私の一枚>(3)ヒコロヒー 絵の外までにじむ幸福 《カフェにて》1877年頃
2021年11月17日 07時17分
「幸福の画家」と呼ばれるルノワールの絵画はその名の通りに愛らしく幸福な瞬間を切り取ったものであることが多い。彼の言葉で印象的なのは「人生には不愉快な事柄が多い。だからこれ以上、不愉快なものをつくる必要はない」というもので、これには画家としての哲学のみならず彼自身の本質的な優しさが集約されている気がしている。
流行の衣装に身を包む美しい婦人たちと、それを眺める紳士。このカフェが持つ人気の要素はここに集う人々の魅力も内包している。婦人たちが身を乗り出して見ている何かもまた、彼女たちにとって魅力的なものなのだろう。何かに魅了されている人々を見てそれを幸福の瞬間だと感じて筆を執ったルノワールの姿まで想像すれば、その優しく幸福なひとときは絵画の外までどこまでも滲(にじ)んでいく気がする。 (芸人)
※次回は24日掲載
◆12月12日まで都美術館で
「ゴッホ展−響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」は12月12日まで東京都美術館で開催中。日時指定予約制。会場で当日券を若干数販売(売り切れ次第終了)。
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