「050」から始まる番号悪用でニセ電話詐欺が急増 入手に本人確認の義務なく事件の温床に

2021年11月18日 06時00分
 「050」で始まる番号を悪用した手口のニセ電話詐欺の被害が急増していることが、捜査関係者への取材で分かった。050番号は、法的な本人確認義務がないため詐欺グループが身元を隠して入手しているとみられる。捜査関係者は「クレジットカード情報があればインターネットで契約できる通信会社もあり、偽造カードでも契約されている」と実態を明かし、警戒を強めている。(井上真典)
 050は2002年ごろ、インターネットなどを使ったIP電話に対する番号として導入された。使用端末に制限がないのが特徴。数百円の基本料金と安価な通話料金で、パソコンやスマートフォンにアプリをインストールすれば、SIMカードがなくても利用できる。法人を中心に普及し、今年3月末で902万番号が使われている。
 警察庁によると、昨年1年間に把握したニセ電話詐欺の番号のうち、050番号は18%(2077件)だったが、今年上半期(1~6月)のまとめでは24%(1736件)に上昇。固定電話番号が58%(4228件)で半数以上を占めるが、050番号は携帯電話番号(18%、1328件)を抜いて2番目に多くなった。
 契約時の本人確認は現在、050番号を提供する通信会社任せになっている。免許証などの画像をインターネット上で提出を求める会社もあれば、身分証不要で契約できる会社もある。
 東京都内で年金暮らしをしている女性(81)は今年4月、050番号を悪用した詐欺で、貯金全額の100万円をだまし取られた。
 女性は自宅で「保険金の過払い金が戻る」と区職員を名乗る男から電話を受けた。近くの現金自動預払機(ATM)に行き、再度電話するように指示されたのが050番号だった。
 050番号の相手に言われるがままATMを操作し、現金を振り込んでしまった。事件後、知人から古着をもらって暮らしているという女性は「相手の話し方は巧妙で急かされた。番号は気にも留めなかった。今はひもじい生活です」と悔しがった。
 警察庁の担当者は「自動録音などの防犯機能付き電話機や相手のナンバーが表示されるサービスもある。050を含めて身に覚えがない番号には注意してほしい」と呼び掛ける。

◆詐欺電話の4件に1件は「050」

 今年上半期に警察庁が把握したニセ電話詐欺に使われた番号の4件に1件は、050番号だった。詐欺の犯行ツール(道具)の電話機は時代によって変遷。警察は総務省と協議しながら法改正や対策を進め、詐欺グループと攻防を繰り広げてきた。
 ニセ電話詐欺は2003年ごろから被害が目立ち始め、14年の被害額が566億円と過去最悪を記録した。その後、減少に転じたが、昨年も285億円と深刻な状況が続く。
 2000年代前半は使用者の特定が難しいプリペイド携帯の使用が目立っていたが、同後半に入ると、レンタル携帯に移行。17年ごろから格安スマホなどもニセ電話詐欺に悪用されるようになった。
 警察は携帯電話不正利用防止法や犯罪収益移転防止法で本人確認義務を徹底するなどし、トレンド(潮流)の犯行ツールへの対策を進めてきた。
 ここ数年の主流となっている転送サービスを使った固定電話番号への対策では、詐欺に使われた悪質な再販業者が持つ番号を一時停止し、新たな番号を売らないよう大手電話会社に要請。だが、これで番号が買えなくなった一部の業者が、050番号を購入し、転売するようになっているという。
 050番号は、携帯電話不正利用防止法や固定電話対策の対象外のため、現状では詐欺に使われても大手電話会社が番号の停止などはできない。警察庁の担当者は「現在、詐欺グループによる050番号の悪用を防ぐ枠組みはない。総務省や業界団体と対策を協議している」と話す。(井上真典)

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