誰もがなりうる認知症 怖がらずに 孤立せず行政サービス利用を

2021年11月18日 07時36分
 もし認知症になったら、介護や財産管理をだれにどのように任せればよいか。認知症対策に詳しい司法書士の村山澄江さん(42)と、介護や終活問題を取材し、自らも介護体験があるノンフィクションライターの中澤まゆみさん(72)が「認知症に備える」(自由国民社)を出版した。認知症対策のガイドブックといえる内容で、ともに事前の備えの大切さを分かりやすく説く。 (桜井章夫)
 −著書で「認知症には誤解がある」と指摘しています。
 村山 まず「何も分からなくなる」というのが最たるもの。認知症になると「忘れてしまう」というのも誤解です。記憶しづらくなるのであって、それを家族から叱られると、感情はあるので心を閉ざしたり、怒りや暴力につながってしまうことがあります。

<むらやま・すみえ> 1979年、愛知県生まれ。司法書士。認知症サポーター。公益社団法人「成年後見センター」リーガルサポート会員。認知症対策の相談者数は1300人超に。共著に「今日から成年後見人になりました」。

 中澤 認知症は病名ではなく、「日常生活に支障のある状態」ととらえるべきです。引き金になる病気は七十種類以上あり、原因の病気によって経過や進行に違いがある。脳の外傷や腫瘍が原因だと、治る可能性もあります。
 −認知症には「誰でもなりうる」とも書いていますね。
 中澤 誰でもなる可能性がある状態だから、むやみに怖がるのは逆効果。東京都世田谷区では昨年十月に「認知症とともに生きる希望条例」が施行されました。認知症になっても当たり前に暮らせる社会に変えたいと思っています。

<なかざわ・まゆみ> 1949年、長野県生まれ。医療、介護、福祉、高齢者問題を中心に執筆。世田谷区認知症施策評価委員。著書に「おひとりさまでも最期まで在宅」「人生100年時代の医療・介護サバイバル」など。

 −介護保険サービスについても触れています。
 村山 相談窓口で「要介護認定を受けたい」とはっきり告げ、訪問調査では服装を整えたり部屋の掃除はせず、普段の状態を見てもらうことが大切です。
 中澤 私は母を四年、父を三年半、遠距離介護しました。介護する側はストレスや孤独感を抱えがちです。本人にも家族にも、地域の支え合いが必要です。
 −著書では、成年後見制度を分かりやすく解説しています。
 村山 認知症が進行して問題になってくるのがお金の管理です。成年後見制度を大別すると、判断能力が不十分とされた場合に家裁で後見人を選任してもらうのが「法定後見」。一方、判断能力があるうちに能力が低下する場合に備え、「この人を将来の後見人にしてほしい」と公正証書で契約するのが「任意後見」です。任意後見制度は転ばぬ先のつえとも言えます。
 −中澤さんは実際に任意後見を務めたそうですね。
 中澤 十七年前、一人暮らしだった友人の女性が認知症になりました。当初は法定後見を考えましたが、友人が受け入れず、まだ判断能力があったため、弁護士の助言で私が任意後見の受任者となりました。
 弁護士などの後見監督人がつき、友人のお金の動きを家裁とともにチェックします。友人は八年間の自宅生活後、グループホームに八年、いまは特別養護老人ホームに移っています。一人暮らしの場合、任意後見は選択肢の一つです。
 村山 この女性の希望に沿えたのだと思います。もしものとき、どんな医療やケアを受けたいのか、どんな暮らし方をしたいのか家族や身近な人と共有することは大切です。
 −家族信託とは。
 村山 認知症になっても成年後見制度を利用せず、信頼できる家族に財産の管理・処分を託す仕組みです。何も対策をしない場合、一人暮らしをしている親が認知症になって日常生活が困難な状態になったとき、その子どもが親の預金を解約したり、実家の売却をしたりできないケースが出てくる。その備えとして事前に家族間で契約しておく仕組みで、認知症に備える選択肢の一つですね。

書籍「認知症に備える」

<認知症> 脳の病気や障害などさまざまな原因で認知機能が低下し、生活全般に支障が出てくる状態をいう。いくつかの種類があり、最も多いアルツハイマー型認知症では、もの忘れなどを発症し、ゆっくり進行する。厚生労働省は2020年時点で65歳以上の認知症の人は約600万人と推計。25年には約700万人(高齢者の5人に1人)と予測する。

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